理事 渡邉佳代
DV子どもプロジェクトが活動をスタートして16年。その間に、場所を設定して親子にお越しいただく来所プログラムから、親子が生活するDVシェルターに私たちが出向いて行う派遣プログラムへ、そして、暴力への対処やストレスマネジメントなどの心理教育プログラムから、親子に馴染みのある工作遊びや身体に働きかけるプログラムへと、親子やDVシェルターのニーズに合わせて活動形態も変化してきました。
スタッフはボランティアで、活動当初から臨床心理学や対人援助を学ぶ大学院生が主となってきたため、1~2年で入れ替わるスタッフが、どのように活動を通して得た知恵や経験を共有し、それを蓄積していくのか、1回限りの出会いの中で親子と何ができるのか、DVシェルターの職員さんとどのようにプログラムの意義を共有し、連携していくのか、チーム作りとともに模索し続けてきました。
まずは私たち自身が安心・安全に、そして楽しんでプログラムを続けられるよう、この数年は、スタッフ研修を定期的に重ねてきました。1月の研修では、施設心理士の林久美子さんより、シェルターに入所中・退所後の親子へのケアについて伺いました。暴力のある生活を生き抜いてきた親子が、安心して感覚を開き、味わうことのできる時間を持つこと、自分のペースややり方で心地よいと感じ、人に大事にされる経験が、自分を取り戻し、「普通の生活」を生きるための財産になっていくことについて、考えさせられました。
栗本美百合さんによるアートセラピーの実習では、ものづくりを通して湧き上がる身体感覚や、プロセス(生じるストーリーや、折る・切る・重ねるなどの動作)、素材(色、手触り、匂いなどの五感)から、自分とつながり直し、たゆたう心地よさ、心を耕して味わい、それを仲間とともに安全に楽しむ心地よさを体験しました。「作品はその人の心」であると栗本さん。そこで生まれた作品(=心)を大切に思い、意味あるものとして、安全に持ち帰るには、それを見守り、大切に受けとめてくれる他者の存在が大きく、プログラムでの私たちのあり方として、心にとめておきたいと思いました。
昨年12月の研修で、NPO法人レジリエンスの中島幸子さんに、「1回限りの出会いの中で、親子に何ができるのか、どのようにつながれるのか、心地よさや大切にされる感覚をどのように重ねられるのか」と、問いかけられた言葉を考え続けています。私たち自身も体験を通して、今後も模索し続けていきたいと思います。
箱やブックカバーにコラージュ
石鹸やバッグにデコパージュ
【2018年1月~5月の活動】
2ヶ所のDVシェルターにて派遣プログラムを実施しました。この間、団体では2,4月の計2回実施し、子どもはのべ6名が参加しました。施設では3月に実施し(5月は延期)、子どもは9名、おとなは5名が参加しました。1月にはスタッフ研修を行い、施設心理士の林久美子さんによる『DV被害母子の生活再建とケアについて~シェルター入所中から退所後の支援』、栗本美百合さんによる『アートセラピー~コラージュ技法と体験』をテーマに学びました。
(ニュースレター55号/2018年7月)