Peaceful Anger Management (PAM)グループ実践者養成講座のご案内
今年に入って、親からの虐待により、幼い命が失われた事件が大きく取り上げられました。近隣の住民も、子どもの泣き声や大きな物音に気づいてはいても、通報には至らず、最悪の事態となりました。ほとんど毎日のように虐待のニュースが報じられています。その背景には、近所づきあいが希薄になり、母親が孤立した中で追いつめられ、それが子どもへの虐待へと向かってしまっている状況があります。
虐待についての取り組みは、これまでも、児童相談所をはじめ、様々な関係機関で模索されてきました。しかし、たとえ関係機関につながっても、親の虐待行動を変えるのは難しいという声も、専門家の間で聞かれます。
虐待してしまう親の多くは、怒りのコントロールに問題を抱えています。私たちは、行動を変えるのに即効性があるといわれている認知行動療法を使った、親向けのグループプログラムを開発し、実践してきました。
この研修では、テキストと進め方の詳しいマニュアルを配布し、模擬参加者となって、グループを実際に体験していただくなど、よりわかりやすく、実践に役立てるような内容となっています。これまで、児童相談所、保険所、子育て支援センター他、様々な形で親と関っている援助者の方に多数ご参加いただき、ご好評をいただいています。
◆プログラムの内容
【1】 オリエンテーション
グループの目的や性質、参加のルールなどについて説明します。そのあと、親がコントロールされない怒りを子どもにぶつけることでおこる否定的影響について学び、このグループを通じて達成したい目標の確認をおこないます。
【2】 怒りの行動を変える決意をしましょう
怒りは、自分自身のものであり、自分の怒りに責任をもつことが大切であることを学びます。そのうえで、怒りの行動によるデメリットについて、また怒りの行動を変えるメリットや長期的影響について考え、怒りのコントロールへの動機づけを高めます。
【3】 子どもへのしつけ、叱り方を学びましょう
怒りをコントロールしても、子どもにどう叱ればいいいかわからないという親のために、しつけの意味、叱り方の基本やコツについて、わかりやすく説明します。
【4】 怒りの感情と行動に対処しましょう
怒りといっても、ちょっとしたイライラから、ムカムカ、激怒まで、怒りの感情の大きさに違いがあることに気づいていただきます。小さな怒りのときに気づきこまめに対処することで、怒りはコントロールできることを学び、具体的な対処法のリストを作ります。
【5】 怒りを強める思考に対処しましょう
怒りには、「こうあるべき」「こうしなければいけない」といった親自身の考え方の癖(自動思考)が影響していることがよくあります。そこで、この回では、怒りを強める思考に気づき、それを怒りを弱める別の志向へ置き換える練習をします。
【6】 怒りに先行する状態に対処しましょう
子どもに同じことをされても、ひどく腹の立つときと軽く流せるときがあります。それは、親自身の体調やストレスなど、怒りの先行状態が関係していることを学びます。心身をリラックスさせる方法の一つとして、動作法によるリラクセーションを体験します。
【7】 怒りのあと、まとめ
この回では、怒りの先行状態への対処について、みんなでアイデアを出し合います。また、怒りすぎてしまったときどうすれば子どもへの否定的影響を減らすことができるのかを学びます。最後に全体をふりかえって、最初の目標がどれぐらい達成でき、その状態を維持するには何が必要かを話し合います。
このグループでは、怒りについて学んだことを、有効に身につけて頂くために、毎回その回のテーマに添ったワークシートを渡し、家で課題をしてもらいます。怒るたびに、それをワークシートに記載しなければならないと思うだけでも、自分の怒りについて客観的に観察できるようになるという効果があります。
★参加者のご感想
怒りの構造がよくわかったので、日頃の業務に活かせそうです。特にワーク形式で問題点を整理しやすいのがよかったと思います。
しっかりしたプログラムで、理解しやすかった。
怒りだけでなく、子育てや人とのコミュニケーションについても学べたのがよかったです。関心を持っていた問題だけに受講して大変満足しました。
プログラムも詳しく書いてあり、テキストに沿っているので、相談業務に、すぐに活用できそうでありがたいです。自分自身の怒りのコントロールにも役立ちそう!
※ 今年も7月27日(火)・28日(水)に実施します。
(ニュースレター31号/2010年5月)