理事 桑田 道子
日本離婚・再婚家族と子ども研究学会が今年4月に設立されました。「離婚・再婚家族と子ども」を研究テーマとして、心理・社会・法・医療・福祉・教育等の研究者、専門職が参加している学際的な研究活動になります。
第1回学会が2018年11月3-4日に茨城大学水戸キャンパスで行われ、大会シンポジウム「面会交流の現状と課題-日本は海外から何を学ぶべきか」の4名の報告者のひとりに加わらせていただきました。
シンポジウムでは、■ドイツの「子どもの最善の利益となるように親責任を果たしていく」裁判所主導型の合意紛争解決モデル、■アメリカの「すべての離婚夫婦が裁判離婚を経て、離婚後に親同士がどのように養育上の責任を担うか、子どもとの時間の分担等詳細に取り決めるペアレンティングプランを作成する」実務、■同じくアメリカで「離婚前に司法過程に組み込まれている『離婚家庭と子どもへの支援FAITプログラム』」について、それぞれ法学者、家庭裁判所調査官、心理学者からの報告がありました。
日本の離婚の9割が協議離婚である現況と、諸外国において全離婚が裁判による成立(協議離婚は不可)である差異は、親の離婚が子どもに与える影響にどのような違いをもたらすのか、とても興味深いです。
日本において、手続き上は協議で簡便に離婚が成立するとはいえ、諸外国と比べて気軽に、安易に有子離婚している印象はありませんから(それどころか、日本の離婚はギリギリまで我慢して忍耐している分、子どものためにフレンドリーな元夫婦の新しい関係を築くことが難しいと指摘されるようなこともあります)、家族観には歴史的背景、文化、価値観が非常に反映されていることを改めて思います。と同時に、Vi-Projectは、多くの先輩方のご支援、ご指導のおかげで、ドイツやアメリカも含め、海外の先行研究を目で見て、肌で感じて、学び、もちろん十分に理解、把握できているとはいえませんが、そのうえで「今の」日本にあったかたちでのサポート内容を随時検討、提供してくることができた幸いを実感しました。
そしてなにより、この分野について真剣に考え、研究に実践に、力を注いでおられる方々がこれほどたくさんいらっしゃるのかと、会場に集まられた方々の姿に胸が熱くなりました。
Vi-Projectの立ち上げ当初には、離婚・再婚家族と子どもへの支援との思いを掲げたことに対し、「それは他人がすることではない、余計なお世話。万一、なにか困ったことがあったとしても自分たちでなんとかすべきこと」という声は少なくありませんでした。そのご批判は常に私たちが「第三者の助けが必要なこととそうでないことの境界線」を意識し、判断を見誤らないことに役立っていますが、やはり、社会が子どもたちの育ちにサポートできうるところはあります。
今後も、より必要に即したサポートに努めてゆけるようスタッフ一同、真摯に取り組んでゆきます。
(ニュースレター56号/2019年1月)