活動会員 亀田佐知子
今年4月、兵庫県伊丹市で面会交流中に起きた殺害事件は、みなさんのご記憶にも新しいことと思います。報道によれば、離婚後初めての面会交流中に、父親が4歳の娘を殺害しみずからも自殺したということでした。こうした事件は衝撃的ではありますが、けっして「想定外」ではない……わたしたちVi-Project はそう考えています。離婚というつらい状況のさなかにいる親が、心理的にひどく追い詰められているのは想像に難くないからです。
面会時に同居親と別居親とのあいだを行き来するお子さんに付添う、トランスファー・サポートを行なっているVi-Project にとって、お子さんの心身の安全を確保することは、最重要の課題です。今回はVi-Project の活動を危機管理対策という面からご紹介したいと思います。
まず、サポート引受け段階でスクリーニングを行います。支援を希望する(元)夫婦には、必ず事前カウンセリングを受けていただき、面会交流を成立させる強い意思があるか、互いに協力・努力できそうかを確認します。お住まいやご勤務状況、連絡・移動手段などの基本情報や、離婚にいたった経緯、現在の生活のご様子なども詳細に提供いただきます。そのうえでVi-Project として支援可能と判断できる場合にのみ、ルールを順守する旨を誓約する書面提出とともに、登録いただきます。
送迎場所の設定などは、同居親と別居親が顔を合わせる必要がないよう配慮し、無用なストレスやトラブルの発生を最小限に抑えます。細かな調整ごとには物理的・精神的負担がつきものですが、Vi-Projectが間に入ることで、利用者が直接やりとりする必要がない仕組みをとっています。
サポート開始後は、面会の都度、双方の親に簡単な記録を提出していただき、面会時間をどう過ごされたか、面会前後のお子さんの様子はどうかなどを把握するよう努め、スタッフ自身も、双方の親やお子さんの様子に注意します。スタートから3回目の面会時には双方の親とのフォロー・カウンセリングを設け、面会を始めて間もない時期の戸惑いや不満、懸念の解消をはかっています。
こうしたステップを踏んでも、面会を進めるなかで一方(または双方)の不満が高まったり、ルールを無視する行動が見られたりすることもあります。まずは調整に努めますが、サポートの継続が不可能と判断した場合はVi-Projectから支援の中止を申し出ます。
Vi-Projectは、信頼できる利用者、万全に支援できるケースを見極めて全力を尽くすこと、離婚で傷ついた両親や子どもが心理的安定を取り戻すのを助けることこそが、安全な支援につながるという視点に立って活動してきました。そして、直接支援を開始した2006年から現在にいたるまでのべ1000回を超える面会が無事に実施されてきたのは、ひとえに、利用者おひとりおひとりの努力ゆえと実感しています。心からの敬意と感謝を胸に、今後も前進していきたいと考えています。
(ニュースレター53号/2017年7月)