私たちの日頃の生活では、身の回りのたいていのものは商品だ。何でも買うし、買えない物はない。そんな消費者メンバーが、穴場だと教えられた浜でアサリを掘ることになった。そこは京都府の水産試験場の敷地内、港の脇のボート小屋の前の浜だった。事情を分かった職員のはからいで入れてもらったものだ。 「ほんまに採れるのかー?」、大人も子どもも最初は半信半疑だった。「何だか道具が怪しいし、採れると云ったってしれたものじゃないの」「みんなが食べるほども採れるのかね、金網だ、炭だ、醤油だって、たいそうな用意して」、そう思っていた。 ところが、教えられたように肩まで水につかって、土木工事のように掘り始めて驚いた。スーパーの冷蔵棚で売られているものより、ずっと立派なアサリがざくざくと、奇妙な貝堀り道具の網の中に、泥や気味の悪い虫も一緒に入ってきた。もう大人も子どももあったものではない。どんどん採れるから、ますます興奮する。二時間もすると浜辺のポリバケツは、どれもこれも山盛りの状態になった。 ほどよい労働の後に、浜で食べる大アサリは本当に美味しかった。食べきれないほどの収穫に大いに満足した。そして残りは、ポリ袋に分けて職員が自宅に持ち帰って、夕飯のすまし汁の具になった。
(ニュースレター6号/2004年2月)