このキャンプでの親たちの目的は、親子でアウトドア体験を楽しむことではなかった。たっぷりと用意した時間の中で、心ゆくまで子育てや、親子の問題を語り合ってもらおうというものだった。そのため大きめのテントを用意して、明かりを囲んで話し合えるようにランタンを用意した。 夜が更けても、子ども達の一部はまだテントの中で話しているようだったが、片づけを済ませた親たちとスタッフが集まってきた。 まず私が、この集まりに特に決まった話題があるわけではないこと、またスタッフが質問に答えるのでもないことを説明した。そして私達のほとんどが、同じように子育ての真っ最中だったので、親の一人として参加しているつもりだと伝えた。話がうまく拡がってゆくかどうか懸念はあったのだが、まったくの杞憂だった。 日頃、子どものことをあれこれ思っていても、なかなか夫婦で語る機会は少ないものだ。子どもの留守中に、初めて二人でゆっくり話し合ってみたという両親は多かった。その内容が口火になって、お互いの話が延々と明け方までとぎれる事なく続いた。
(ニュースレター9号/2004年11月)