知らない街に手探りでなじんでいくプロセスが旅の醍醐味だ。早くわかりたい気持ちも一方にありながら、小さな発見を一つずつ重ねていくのも捨てがたい。分かってしまえばなんと云うこともないことばかりだが・・・。 バス停はいっぱい見かける。でも乗る勇気はなかなか出てこない。レールのあるものなら、間違った同じところを戻ればいい。しかしバスはそうはいかない。ところがバンコク市内、市電、地下鉄の類の交通機関がない。列車は郊外や長距離方向だけだ。 そこでタクシーという事になるのだが、これがややこしい。昔懐かしいミゼット改造車のような「トゥクトゥク」。この料金は交渉制だという。でも英語の話せる運転手はほとんど居ない。言葉が通じず、適正価格の見当もつかないで、数字だけの筆談交渉になる。タクシーもメータータクシーとそうでないものが走っている。ガイドブックはメーターのものが安心と奨めている。ならばみんなそれにすればいいと思うのだが、地元の人たちの利用がそんな風に片寄っているとも見えない。又、バイクに乗った背番号付きの若者が街角のあちこちにたむろしている。これも客待ちの交通機関だと言う。背中に抱きついて渋滞の街をすり抜けるように疾走するのだ。運河の桟橋に乗合船も見かけたが、どこへ行くのやら・・・。まさに異国のたそがれ時である。(この旅は十年前のものです。)
(ニュースレター17号/2006年11月)