「せっかく来たんだから・・・」、この一言への対抗意見を持っていないと、旅は限りなく忙しくかけ足になる。意見といったって大したものではない。「何もかも見尽くすことは出来ないんだ、また来ればいいじゃないか・・・」、この程度のことなのだが、これで随分ゆっくりする。そんな中で見つけた上手な短期外国旅行術の一つが午睡だ。 日常生活における目覚めは、たいていは時間も場所も一定している。起き出してすることも、その後の行動も、目的地も決まっていることが多い。 ところが旅先の昼寝からの目覚めはそうではない。考えてみると、楽しく戸惑えることなんて他にはあまりない。それはこんな風だ。 ぼんやりとしたまま目が覚めかけている。薄暗い部屋の気配が感じられる。寝ぼけ眼に映るのは、見慣れた天井ではない。「あれえ・・、何だ?どこで寝てるんだ?何してるんだろう・・」。「今は何時頃だ・・・朝か、夜か・・・」とぼんやりした頭は、疑問で一杯になる。 でもそんな時間はごく短くて、やがて「そうだ、旅行に来てるんだ、ここはバンコクだ・・」と応えてくれる意識活動が目覚めてくる。唄の歌詞にもあるように、「戸惑いトワイライトは心が揺れる・・・」、さあ第二ラウンドに出発だ。
(ニュースレター21号/2007年11月)