バンコクの魅力の一つに、なんだか怪しいと言うところがある。路地裏通りの汚さや、細い運河のドロンとした水面。街全体がちょっと得体の知れない人間のようなエネルギーっを感じさせるところがあって、恐い物見たさの好奇心をくすぐる。 それほどのこともないけれど、トゥクトゥクという乗り物もたいがいなものである。街にはメーター付き・冷房完備のタクシーがたくさん走っている。明朗会計で、乗り心地も良い。それにも関わらず、この怪しげな乗り物が生き残っているのは何故だろう。 実際私たちも好んで乗ったからその魅力を書いてみようと思ったのだが、書けない。良いところがないのである。だが悪口ならすぐに書ける。まず料金がでたらめである。交渉で決めるから観光客はボラれる。次に、運転手はほとんどタイ語だけしか話さない。カタコトの英語も話してくれない(どうやって交渉するんだ?)。それに、私の感覚では遠距離とはとても呼べない所でも地理を知らない。そしてよく故障する。走行中にでもだ。騒音は浴び放題、排気ガス吸い放題。雨が降ったら濡れ放題、無論安全の保証などはない。運転は乱暴で車体はガタガタ。これだけ揃えば十分だろう。つまりこれが魅力なのだ。
(ニュースレター22号/2008年2月)