理事長 村本邦子
この3月は、縁あって、サンフランシスコへ行ってきました。コミュニティの力を感じさせられる機会の多い旅でした。まずは、一番の目的だった「戦争と世代間トラウマ」に取り組むアルマンド・ボルカス氏によるグループセラピー。ここでは詳しく述べる紙面の余裕がありませんが、小さなグループでワークショップを行うだけでなく、その結果を、映像、パフォーマンス、アート、儀式などを媒体としたパブリックイベントにつなげ、公開して共有するのだそうです。セラピーを誰かの「こころ」の癒しに留めるのでなく、コミュニティへと広げていく一種のコミュニティ・エンパワメントであり、アクティビズムと言えそうです。
コミュニティ・カレッジの授業に参加させてもらった経験も貴重でした。即興劇のクラスでしたが、受講生たちは本当にさまざま。肌の色もさまざま(見た感じは南米系の人たちが多かった?)、年齢も、まだ十代と思われるお母さんが抱っこして連れてきている3歳の男の子、チアをやっているというすぐにかっこよく踊り出す若い男の子、やんちゃそうな男の子、すぐに手を挙げて質問するまじめそうなおじさん、ずいぶん高齢のおばあさんまで。みんなで30人くらいのクラスでしたが、和気あいあいで、飛び入りの私たちを暖かく受け入れてくれました。その名の通りコミュニティに根ざした大学で、彼らにとって貴重な場になっていることを感じました。
それから、バークレーで行われた「多世代反人種差別運動」のイベント。60年代、80年代、2000年代に学生運動をやっていた人たちがシンポジストとなって、まずは、パネルディスカッション。60年代には、有色人種の学生人口が1%だったけれど、運動の成果として、大学にエスニック・スタディが立ち上がったのだそう。しかも、ヒップポップが有力な運動のツールとなっていたということで、後半は、有名なヒップホップ・グループのライブとなりました。世代を越えて会場が一体となる興味深い体験でした。
人間存在にとって、自分がコミュニティに属しているという安心感やつながり感がどんなに重要であるか、あらためて考えさせられました。私たちのNPOの存在が、誰かにとって、そんなコミュニティの基盤をつくるきっかけになればと願いつつ、これからも活動を続けていけたらなと思っています。今後とも、ご理解とご支援をお願いします。
(ニュースレター27号/2009年5月)