理事長 村本邦子
つながりの力
この6月、アウシュビッツとベルリンに行ってきた。北海道フォーラムのメンバーを中心にした小さなスタディグループで、ドイツの和解修復の試みを見て回り、50年以上の歴史を持つNGO、ASF(償いと行動の平和活動)と交流を持つことが目的だった。ASFの素晴らしい活動については、すでに紹介したが(23号、2008年5月)、キリスト教をベースに、過去の償いとして、ドイツの若者ボランティアを各国に派遣し、ホロコースト被害者のお墓や記念碑の手入れをしたり、高齢化したサバイバーの身の回りの世話をしたり、記念館のガイドをしたりなどのコミュニティワークに従事する。昨年3月にASFを訪れた時には、話を聞いて、ただただ感心するばかりだったが、今回、実際にその活動現場のあちこちを見ることができて、その地道で着実な歩みに、ますます感動した。
ベルリンのASFとの交流会では、今、私が進めている南京プロジェクトについて報告したが、報告を行いながら、私がこの地点までたどり着いた道のりを振り返っていた。さまざまなつながりのなかで、2007年5月、ホロコーストサバイバーの第二世代であるアルマンド・ボルカスによる「歴史のトラウマのドラマセラピー」に参加し、11月、南京事件の70周年国際会議に参加して、現地の人々と交流し、2008年3月、これまた、さまざまなつながりのなかで、立命館ロースクールの先生方とベルリンで調査を行う幸運に恵まれ、アルマンドの紹介で、ASFのクリスチャン・シュタッファさんに出会うに至った。そこで、「あさって日本からオダという日本人が来る。7月に日本に行く」という情報を得、北海道大学の小田博志さんとつながった。
そして、2008年7月、シュタッファさんを通じて、日独の戦後について比較している東大グループと知り合い、シンポジウム「市民がつくる和解と平和」を通じて、北海道フォーラムとつながり、なかでも、強制連行・強制労働犠牲者の遺骨発掘に関わっている住職の殿平善彦さんとは、11月の国際平和博物館会議でセッションが重なり、そんななかで、小田さんのベルリンでのサバティカルに合わせて、今回のツアー参加にいたった。現在、10月に南京での共同ワークショップを実現すべく、一生懸命動いているが、この動きのなかでも、不思議なめぐりあわせやつながりに驚くことばかりである。正しく動いている時は、意味ある偶然が立て続いて、何事もとんとん拍子に進んでいくと、私は常々、感じてきたが、ちょうどそんな感じである。起こるべきことは、起こるべくして起こるのだ。つながりのなかにこそ、個人の意思を超えた力を感じるのである。
(ニュースレター28号/2009年8月)