理事長 村本邦子
NPOのこれまでを振り返って
このNPOも十年を超えた。十年ひと昔と言うが、あっという間の十年で、そろそろ世代交代を考える時期が来ている。あらためてニュースレターに書いたものなど読み返しながら、これまでを振り返っている。理事長としてあまり十分なことはできなかったな・・・と悔いも残る。中核となって動けるメンバーは、女性ライフサイクル研究所との兼任で、私自身は大学での勤務もあり、誰かが専任で力を注げる体制をとらなかったので、やむを得なかった部分はある。そもそも、1990年に立ち上げた女性ライフサイクル研究所を法人化しようとなったとき、会社組織がいいのか、NPO法人がいいのか迷い、結局、両方を試すことにした。結果として、組織的な違いは感じている。基本的にNPO法人はボランティア組織だ。経営を考えなければいけないことは同じだが、ニーズの出所が違う。
先日、震災ボランティアに関わることで、新潟で社会福祉法人やNPO法人をコーディネートする片桐公彦さんの話を聞く機会があったが、サービスとボランティアを対比していた。サービスは、奉仕、勤務、奉公で、強制力が働くのに対し、ボランティアは、有志、篤志家、志願兵で、あくまでも自分の好きなことを外に開くことから始まる。ボランティアは1割ほどがドタキャンをするもので、コーディネーターは、その1割を想定に入れておくべきなのであって、無責任なボランティアを嘆くのは間違っている。NPOはそれぞれが好きでやっているから、方針を巡って分裂するが、だからこそ市民性が尊重されるのだという。
そういう意味で、会社はニーズが外からやってくるが、NPOはニーズが内から出てくる。だからこそ、社会のニーズが十分に高まりきらないうちに、自分たちが必要だと思うことをやってみたくなって、社会より一足早くいろいろなことを試行錯誤することができた。実際、この十年、ずいぶんといろいろなことを試してきたし、その成果は報告書やら冊子やらの形で提示もしてきた。ある程度の成果を出したところで終えた事業もあれば、さらに活動を発展させてきたものもある。いずれもやりたいからやってきたものだ。とは言え、NPOにはミッションがある。安心とつながりのコミュニティをネットワークのように拡げていくというミッションをささやかながらでも果たしてきただろうか。現在、活動していているのは、「DV子どもプロジェクト」と「Viプロジェクト」であるが、未来を担う子どもたちに、何がしかの安心とつながりを伝えることができているとしたら幸いである。
NPOとして開くことで、専門家の先生方や会員の皆様のお力添えを頂くことができているのも大きな利点である。こういった利点を最大限活かしながら、このNPOを今後、どのように維持していけるのか、若い世代を中心に、現在、検討を重ねているところだ。みなさまからのご意見も頂ければありがたい。
(ニュースレター43号/2013年5月)