年次大会担当理事:前村よう子
2006年10月29日(日)、大阪府立女性総合センター(ドーンセンター)において、第4回年次大会を開催しました。参加者は、21名(非会員含む)。内容は、当NPOの各プロジェクトの活動報告、フロアとの意見交換、そして当NPO理事長の村本邦子による講演「被害者アドボケイトと二次受傷」及びリラクセーションワーク体験と、盛りだくさん。詳細は、今回ボランティアスタッフとして活躍して頂いた西澤美知さんと岡原圭佑さんから頂戴した感想文にありますので、是非ご一読ください。また、年次大会終了後、同会場にて交流会も行われました。こちらにも15名の方が参加下さり、茶菓を囲み楽しいひとときを過ごしました。ご参加下さった皆様、誠にありがとうございました。また、今回は残念ながらご参加頂けなかった皆様も、次回は是非お越し下さいませ。
感 想
「今日はすごくいい天気なのに,こんな地下の一室ですが・・・」というはじめの挨拶の出だしに気持ちが和んだ。初めて参加させてもらうというのもあり,初めての会場というのもあり,これからどんなことが始まるのか,年次大会という場で自分はどうしたらいいのかと,なんか緊張していたみたいだ。でも,すごくいい天気なのに・・・はみんな同じか,と思ったらちょっと笑えて,なんか緊張も和らいでいった。
プロジェクト活動の報告会。まず,DV子どもプロジェクトの代表者から,シェルター退所者へのプログラム派遣の報告がされた。相談施設に来られない人への援助活動という派遣プロジェクト。来てもらうというところから出向いての援助への転換はとても大きな変化だと思う。こちらから出向いていくが故に施設との連携などの課題もあるとのことだったが,援助を求める人にこちらから近づいて行こうという派遣プログラムがこれからももっともっと深まっていくといいなと思った。また,子どもへの援助を中心にしながらも母親への働きかけも同時に行うという母子並行援助の考え方や,気軽に参加できるように4回派遣の他に1回だけの単発派遣を行っているという配慮や工夫など,学ぶところが多かった。
アドボケイトプログラムからは,勉強会の様子などが報告された。リラクゼーションの学習(?)ということで,アロマセラピーのハンドケアやフットケアなどが行われているということで,とても楽しそうだった。会のほのぼのとした雰囲気が伝わってきた。難しい課題を難しくせず,マイペースにかまえていこう,という姿勢が素敵だなと思えた。人と人との繋がりを大切にしているところは,アドボケイトの考え方とも重なるところがあるのかな。
Vi-プロジェクトは,離婚した家庭の親子の面会のコーディネートを行っているという報告だった。そういう援助があることを知らなかったわたしにはとても新しい感じがした。司法との兼ね合いや援助の焦点を絞るのが難しそうだと感じた。親の都合による離婚で傷つく子どもがいるということを改めて実感し,そんな子どもにとって最善となるような援助とはどんな形での援助なのかにということを考えさせられた。
ボランティアとは何か,援助とは何か,と時々考えるときがあるが,今日の報告会に参加して,いろんな活動の報告を聞いて,こんな援助もあるのか,こんなボランティアもあるのかと,いろいろ考えるきっかけとなった。
講演会については、正直,アドボケイトも二次受傷も単語の存在を知っているだけで,意味も何も理解していないというようなレベルで聞かせてもらった。アドボケイト,アドボカシーなど基本的な用語の意味から知ることができてとてもよかった。
わたしは産業カウンセリングに興味があり,夏休みに東京の某保険会社の本社ビルを訪問した。カウンセリングルームを見学させてもらって,そこでカウンセリングにあたっている人やカウンセリングを利用している人にインタビューをして来ようと思っていたのだが,こちらの説明不足と先方の手違いで,ビルの地下を見学するという思わぬビル見学になってしまった。地下にはセキュリティーシステム,スプリンクラーの水を供給するシステム,電気系統,自家発電機,謎のポンプなどなど,今まで目にしたこともなかったような設備が揃っていた。そして,いつ起こるかわからない災害に備えてその地下のシステムを管理している人たちがいた。「電磁波とかたくさん浴びちゃってるんじゃないですか」というこちら側の軽い問いに,案内をしてくれた現場の人は「そうですね。子どもができないのはそのせいかもしれません。」とあっさり。どうにかしてくれ!と援助を求めることも諦めているようだった。とてもショックだった。でもそれを聞いても,わたしはその人に何もできなくて,どうすることもできなくて,なおさらショックだったのだ。今回の講演会を聞いていたら何故かこのビルの地下のことを思い出してしまった。あの時,あのビルの地下の人が,地上何十階のところにあるカウンセリングルームに訪れることがあるのだろうか,と思ったのだ。それが「大半の人は,専門家の世話にならない。」という春海葉子さんの言葉と妙に当てはまってしまったのだと思う。専門家の世話にならない人たちとどうつながっていくのか。とても大きな課題だが,人と人とのつながりを大切にする援助について,これからもっともっと考えていきたいと思った。
二次受傷について。熱心にかかわればかかわるほど,クライエントが重要な他者となり,援助者が傷ついてしまうことは,避けられないことだと思った。だから,それへの対処を考えること,セルフケアは,とても重要なことだと思った。最後にやったタッピング・タッチは,とても手軽だったので授業の合間に,友達とやり合いっこをした。「あんまり効かないねー」「でも,なんとなく楽になったような・・・」「腕が疲れてきたよー」などとなんだかんだと言いながらやってたら,いつのまにか気分がほぐれていた。とても簡単な動作で,その相手と同じ時間を過ごせるのが,何よりのリラクゼーションだなーと感じた。
(立命館大学大学院 西澤美知)
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プロジェクトの活動報告と村本先生によるアドボケイト・二次受傷ついての講演の二本立てであった。21名という小規模のものであったが、参加者はプロジェクトに関わっている方々ということもあり、フロアからの質疑応答もとても参考になる面白いものであった。
子どもプロジェクトには一度だけミーティングに参加したこともあり、少し馴染みがあり、興味深く聞いていた。僕は非行少年の自立支援と非行防止を目的とするBBSというボランティア団体に所属している。そこでの経験を通して「少年の立ち直りを支援するにはどのような関わりが必要か」「家族の再統合をどのように考えなければならないか」ということを考えるようになった。そのため、子どもプロジェクトのようにトラウマケアと母子関係の支援という二つのテーマはとても身近に感じられ、かつ重要なものであると考えている。このプロジェクトに乗れないほど重要な困難を抱えている母子に対して、そのようなアプローチができるかが今後の課題になるように感じた。また、心理教育やストレスマネジメントの視点を入れた連続講演や単発の講演で、どのような部分にどのような介入効果が見られるのかデータとして示してもらえるとよかったように思う。今後プロジェクトがさらに展開していくときに、どのように展開していけばよいのかの方向性が見えてくるのではないかとも思えたし、アドボケイトという視点からも必要な気がする。
面会プロジェクトはとても重大なテーマであると同時に、クリアすべき条件が多く、まだまだ抱える問題が多い印象を受けた。家裁などとも連携していくという話であり、このプロジェクトの今後の展開が楽しみだ。そして、モデルとなっているアメリカの詳細がもっと知りたいと思う。日米で単純に比較することはできないが、米国でのシステムを知ることで今後の一つのケースに対して、また社会に対してプロジェクトがどのように展開していけばよいのか参考になると思った。
アドボケイトについてがこの日の一番の収穫であった。アドボケイトという言葉になじみがなく、最初はあまりピンと来なかったが、村本先生の話でリアルに考えることができた。児童虐待やDVが社会的に問題ではあるが、それに対する社会の対応が亀の歩みのように遅いのはなぜか。虐待死のようなケースが生じると児童相談所がバッシングの的になるが、その背景にある社会システムの不備が指摘されないのはなぜか。問題の当事者が社会的に声を発するのが難しい問題の性質もあるのかもしれないが、対応の遅さに人知れぬ憤りを感じていた。
だから、その必要性を社会にアドボケイトしていくというこの重要さにはとても感銘を受けるものがあった。保護観察所や更生保護施設、児童相談所などのキャパシティの限界を目の当たりにしていると、援助者の援助の必要性をとてつもなく感じる。
このプロジェクトには弁護士や精神科医もチームとして加わっているということからも、ある特定領域だけが考える問題ではなく、広く他領域がネットワークを作り、社会的に展開していくことが必要となりそうだと感じた。
重要ではあるが今までなかなか手を加えられてこなかった部分に、こうして手が伸べられることはとても素晴らしいことだと思う。しかし、だからこそ逆にとても大変なことでもあるだろう。そのようなことに自分もわずかながらでも力添えできたらと思った。ぜひ参加して何かしらを感じ、何かしらを行動に移せたらと思う。今回教えてもらった考え方や視点を、ぜひ自分の活動にも活かしていきたいと思う。
(立命館大学大学院 岡原圭佑)
当日のアンケートからも、声をご紹介させて頂きます。
ご協力、ありがとうございました。
アンケートより
サポートをする者へのサポートの重要性についてお話されたように思う。私は子の健やかな成長の為の親への援助に関心があるので、今回のお話は繋がるものがあるように思った。講演会の時間が短くなったのは残念でした。
交流会では、初めてお会いした理事の方やスタッフの方とも楽しくお話させて頂いた。村本先生が、私の自己紹介の時に、話の内容について説明して下さったり広げて下さったのが有難かったです。交流会、楽しかったです。村本先生や理事の方々が乳幼児を育てつつ、FLCを立ち上げた話には、大変感銘を受けました。結婚・出産をして、でも自分のキャリアを積んで働きたいと思っている女性はたくさんいると思います。このFLCの
話は一つのモデルとして、多くの女性に知ってほしいと思います。(山田進治)
支援することの難しさを感じました。けれど、とても興味を持ったし、関心を持ち続けたいと思いました。ワークのタッピングタッチが良かったです。なんとなく暖かい感じがしました。交流会では、初めて会った人もいらして、いろいろ話を聞けて良かったです。楽しかったです。 (18歳 女性)
(ニュースレター第18号/2007年2月)