理事 窪田 容子
第3回年次大会を、10月30日日曜日、ドーンセンターにて開催しました。今年は、どのように被害者支援システムをつくっていくことができるのか、私たちにできることは何なのかを考える第一歩として、「被害者支援システムの構築を探る」をテーマとしてシンポジウムを行いました。
初めに、スマトラ沖地震による被害者支援活動に参加した当NPOの理事で兵庫教育大学教授の冨永良喜氏による講演を行いました。被害を受けた子ども達を支える教師研修のためのプログラムの実践をご紹介頂きました。プログラムには、ストレスやトラウマの心理教育、望ましい対処の提案、トラウマの対処としての地域性や、その国の文化や宗教を尊重することという3つの柱がありました。スリランカではストレスマネジメントに役立つ方法(呼吸法、メディテーション、動作法に似たもの)がかなり用いられているとのことでした。また、子ども達を支えている教師自身が家族や家を失った被災者でもあるため、教師達の体験や気持ちの表現や分かち合いを取り入れられていました。これらの活動の実際を、写真や動画で紹介して頂き、より臨場感が伝わる形で知ることができました。日本は、アジアでの災害時に、ソフトウェアの面でも国際貢献をしていけるのではないかとのことでした。
次に、私たちのNPOで支援活動を展開している3つのプロジェクトからの活動報告を行いました。
子どもプロジェクトDV支援チームからは活動会員の小田裕子氏からは、活動経過と、シェルター退所者へのDVプログラム派遣の試みについての報告がありました。
子どもプロジェクト面会支援チームからは活動会員の杉山暁子氏による、テキストの読み合わせ、助成金の決定、アメリカ視察、当事者アンケート、インタビュー、専門家インタビュー、家裁の調査官アンケートなど活動経過についての報告がありました。
被害者アドボケイトプロジェクトからは理事津村薫による、定例勉強会、ジャンプ助成金によるアドボケイト調査の報告がありました。
理事長村本邦子の司会の元に、冨永良喜氏、当NPOの監事で弁護士の宮地光子氏より、コメントと助言を頂き、ディスカッションを行いました。
宮地氏からは、弁護士として関わられたDVの事例をご紹介頂き、アドボケイトなどいろいろな領域の力が必要であることや、父と子が面会することの子どもへの影響についてのコメントを頂きました。
冨永氏からは、DV被害の渦中にある人への支援の必要性や、現在行っているプログラムへのご助言を頂きました。フロアからもご質問やご助言を頂きました。
その後、Brisa(ブリーザ)主宰の栗岡多恵子氏を講師に迎え、リラクゼーションのためのボディワークを行いました。アロマオイルを焚いて頂き、心地よい香りと音楽の流れる中で、参加者が一体となって、栗岡氏のお声かけに合わせて体を動かし、体も心もリラックスできる時間を過ごすことができました。ボディワーク終了後の、参加者の皆さんの柔らかな表情が印象的でした。
その雰囲気の中で、引き続き、軽食を用意しての交流会となり、シンポジウムの時とは違ったインフォーマルな語り合いの場となり、つながりを深める機会となりました。
年次大会で学ばせて頂いたことや皆様とのつながりを、また今後のNPOでの活動に活かしていきたいと思います。ご参加、ご協力頂いた皆様、どうもありがとうございました。
活動会員からの感想
先日の年次大会で、初めてFLCの活動に触れることができた。
冨永先生の講演『スマトラ沖地震被害への支援事業に参加して』では、「その国の文化や地域性を尊重した中での被災者支援」という点が印象的だった。アチェの文化では涙を流すことが良しとされないそうである。ではどうやって、震災での喪失体験を受容していけばいいのだろうか。被災者の方々は、プログラムの中という安全な場所で、ボディワークや描画を使った表現などを用い、震災を追体験していた。あちらでは、ボディワークが日本よりも身近なのだという。地域援助では、まずその文化を知り、それに合わせた援助方法を考えること、この大切さを再確認することができた。
その後の3チームからの報告は、どれも大変興味深かった。私はカウンセリングを学んでいるが、この3チームの報告は、いずれもカウンセリングだけでは手の届かない、当事者が本当に必要としている援助だと感じた。このような具体的な援助方法も今後学んでいきたいと思っている。
(活動会員 前田瑠美)
(ニュースレター第14号/2006年2月)