第二回年次大会を開催しました。多数ご参加頂き、シンポジウム、交流会ともに、盛況のうちに終えることができました。また活動会員の栗岡さんに講師をしていただいた、リラクセーションでは、身体とそして心もほぐれていくような、気持ちよい時を過ごすことができました。フロアからのご意見や、頂いたご感想なども、また今後の活動の励みにしていきたいと思っています。シンポジストの方々、ボランティアを引き受けてくださった活動会員さん、ご参加下さった皆様、どうもありがとうございました。(理事 窪田容子)
リポート 活動会員 後藤晶子
11月3日、当NPO法人の第二回年次大会が、大阪NPOプラザにて開催されました。今回は『DV家庭に育つ子どもへの支援』というテーマでのシンポジウムを中心に行なわれました。質疑や当NPOに対してのさまざまな要望など活発な意見交換のあとは、突如会場内にラベンダーのアロマオイルが香り、活動会員でもある栗岡多恵子さんによるリラクセーションタイム。参加者からも「とても気持ちが良かった」などと大好評でした。そのなごやかな雰囲気のまま参加者による交流会が行われました。以下にその概要をお知らせ致します。
理事長挨拶:村本邦子
今回子どものために何が出来るかという事を考え、現在取り組んでいる活動の紹介と報告をします。虐待、DV、犯罪…起こる前にコミュニティの中でみんなで取り組む必要がある。それは種まきでしかないかもしれないし、劇的に何かが変わるわけでもないが、コミュニティの意識を変えていきたい。子どもは小さな働きかけで変わるし、いろんなトラブルを抱えていながらも強くたくましく生きる力を持っている。子どもが本来もっている力をいかに引き出せるか。そのための取り組みの一つだ。
「DV被害を受けた子どもと母親に対するコミュニティでの支援」
安田裕子(子どもプロジェクト・DV親子支援チーム)
このプロジェクトは、子ども達のもっている力を引き出し、専門家や一般社会への意識啓発を行うことを目的にし、コミュニティレベルでの支援を目指している。当NPOの掲示板への書きこみがきっかけで発足した。2002年2月から毎月1回の研究会をまず行ない、その後英国視察や弁護士へのアンケート・インタビュー調査、プログラム実施のためのボランティアスタッフ養成講座の開講、最終的にはそれらをまとめて報告書を作成した。
子どもプログラムの実施の成果として、初期は否定的発言をしていた子どもが積極的発言をするように変わったり、身体的接触に緊張していた子どもが、ポジティブな表現をするようになったりの変化が見られた。また、母親自身もサポートが必要だったため親へもプログラムを実施した。アンケートから親同士でサポートを促せてよかったという意見などがあった。
シンポジスト 左から村本理事長 石田理事
冨永理事 桑田さん 杉山さん 安田さん
「面会サポートプロジェクト」:
桑田道子・杉山暁子(子どもプロジェクト・面会支援チーム)
離れて暮らす親子の面会をサポートすることを目的として発足した。これも当掲示板への弁護士からの「子どもにとって安全な面会のサポートをして欲しい」という書きこみがきっかけだった。離れて暮らす親と会う事が良いのか悪いのかは家族の背景によって違う。諸外国では面会センターがすでにあるが、日本では会わない方がよいという風潮がある。今まで2回ミーティングを実施。海外文献を参照しながら、子どもの気持ちに寄り添った面会サポートの実現を目指す。
「DV家庭に育つ子どもへの支援」:
石田文三(理事・春陽法律事務所弁護士)
非行少年の弁護活動に関わる中で、その多くがDV家庭に育った傾向がある。弁護を担当した殺人の罪に問われていた19歳のA少年は、3歳で両親が離婚し、それ以前も以降もしつけやきちんとした養育は受けていないようでネグレクトの状態であった。知能レベルは高かったが、人に対する信頼・共感があまり無いように思えた。相手を殺して悪かったというが、「やられたらやり返さないとだめ」と言い張るA少年。早い段階で彼の養育歴が違っていたら、彼自身も変わっていたのではないか。
冨永良喜(理事・兵庫教育大学教授)
DVを目撃して育った子どもと母親が抱える問題として「兄弟喧嘩が絶えない」…暴力の再現、「人生はつまらないものだ」…無力感、「友達関係が結べない」…トラブルを回避する傾向、「父親にそっくりになって心配」…トラウマ性記憶等があげられる。
養護施設で育っている子どものケアプログラムとしてパペットや紙芝居を使ってトラウマを理解させる方法がある。子どものトラウマにはプレイセラピーも良い。
■ 質疑応答・意見交換
■ どこでもできるリラクセーション 講師:栗岡多恵子
■ 交流会
初めて参加した年次大会でしたが、それぞれのプロジェクトのニーズへの生の声や皆さんの熱い思いを聞くことができ、これからの活動への励みになりました。
参加者の感想
■「年次大会に参加して」 佐藤まどか
子どもたちへの支援、それはずっと気になっていたことだった。25年以上も前に養護施設に勤務していた時から。現在行っているシングルマザーの会で、離婚をした女性たちに出会う。みんな、いっぱいいっぱいなのだ。それでも、その人たちは、子どものことを一生懸命考えている。親の問題で、子どもを不幸にしちゃいけない、と世代間の線を踏ん張って、越えないようにする。子どもを大人の位置に持ち上げないように頑張っている。母親のワークの間に保育をしていると『あのね、ママはいつも泣くの。私に、ごめんねって言うの。』と屈託なく笑って話し掛ける小さな子がいる。どうやっても、ママがどんなに子どもを巻き込まないでおこうと思っても、それは不可能なこと。家というシステムの中でおこっていることなのだから、影響を受けないということが出来ない。言える子も言わない子もそれぞれに感じている。親にも子どもにもやっぱり、別々に支援がいる。
FLCの活動には本当に頭が下がる。また力をもらった。
ややお疲れで立ち止まっていた私を、FLCの面々が振り返って、「行こうか」と言う。決して手をつないだり、背中を押したりしない。そして、面々は、また前を向いて歩き出す。休憩も良し、歩くのも良し、そんな、空気が私を支える。何ができるだろう・・・が何か出来るかもしれないに変わった。
■「第2回年次大会に参加して・・・」
カウンセリングスペース「リヴ」 中山 純子
離婚して6年・・・あっという間に過ぎたような気がする。離婚直後は怒りや悔しさでボロボロだった。そんな私の気持ちを理解してくれたのがまわりにいる仲間やFLCの方々だった。
私は現在、保育の現場で子育てに悩む母親に出会うことがある。その事について女性問題の視点を持ち合わせていない人とのケース会議ではこちらの話をなかなか理解してもらえず、自分の力不足と分かり合えない空しさで元気をなくしていた。しかし、年次大会に参加して、息ができた・・・というか分かり合える人たちとの会話はなんて気持ちがいいのだろう・・・と久しぶりに気持ちが高揚していくのを感じた。
誰にどんな支援が必要なのか・・・辛い事を言葉にできない子どもたちに寄り添いたい・・・次々に私の中から何かが湧き上がってきた。離婚後の面接では私自身今でも悩みが尽きない。面会プロジェクトの今後の活動に期待するとともに、今の私になにが出来るのかを考えたい。そして考える機会を与えてくれたこの年次大会に参加し有意義な時間を過ごせた事に感謝している。
■理事 津村 薫
普段は、それぞれのプロジェクトがそれぞれに動いている。年次大会は自分が関わっていない他プロジェクトの詳しい研究や実践に最も触れられる日になり、理事の私にとっても楽しみな日だ。DV家庭に育った子どもの支援、そして面会支援プロジェクト、「安心とつながりのコミュニティづくり」のために多くの人が学び、実践する場になっていることにあらためて胸打たれる。リラクセーションで気持ちをゆるゆるして、交流会では素敵な言葉にハッとしたり、夢中で食べたり(笑)、笑ったり・・・安心とつながりを私こそが実感した日だった気がする。
(ニュースレター第10号/2005年2月)