理事 新恵里
私が「アドボケーター」が実際に活動する場面をみたのが、米国・犯罪被害者センター(NPO)での活動のなかででした。犯罪被害においては、よく「心のケア」と言われますが、ここでの活動の中心は、犯罪被害に遭った人々に対して、事件直後からアドボケーター自ら被害者のもとに駆けつけ、警察や病院への付き添い、裁判所へのエスコート、利用できる制度やサービスなどの情報提供、煩雑なペーパーワークが必要な手続き介助など直接的な援助でした。
日常生活のサポートや付き添いなど、直接的な支援は、しばしば「必要以上の介入」と思われたり、「被害者の自立を妨げる」という批判があります。もちろん、カウンセリングなどの精神的ケアが必要な場面もあり、直接的支援は、いわゆる「心のケア」の必要性を否定するわけではありません。しかし、警察への相談・届や福祉サービスを受ける手続き、裁判所等への同行など、現実的な問題を解決するためのサポートが直接的に得られることによって、一歩を踏み出せることが多々あると、私は思っております。
犯罪被害者センターの所長は次のように私に言ったことがありました。「被害者は弱い存在だから救わなければならないという理由で支援するのではない。被害に遭うことによって解決に向ける力を一時的に失われているだけである。その力を引き出せるように私たちは、横から少し支えるだけである」と。
性暴行、子ども虐待、ドメスティック・バイオレンス、犯罪被害‥‥。残念ながら、私たちの周りには、さまざまな暴力や被害が日常的に起こっています。そして、それは被害に遭う人々のせいではありません。しかし、特に日本では、被害者に対する誤った理解や偏見のため、被害が問題化されずに(近年ドメスティック・バイオレンスなどに対して一部ようやく動き出しましたが、まだまだ課題はあります)、適切な支援制度が確立されないまま、結果、被害者が孤立していく、そしてまた問題が見過ごされていくという悪循環のままでした。
NPO法人「FLC安心とつながりのコミュニティづくりネットワーク」では、さまざまな被害にあった方への支援アドボケーター養成講座を、来年度の事業として展開することに決めました。
近年、アドボケイトの必要性が、日本でもようやくあちこちで聞かれるようになりました。性暴行、子ども虐待、ドメスティック・バイオレンス、犯罪被害などの被害者に直接寄り添い、被害の回復に少しでも近づけるような直接的援助を行うため、被害者の実態や心理などの基礎知識を学びます。現行の福祉サービスや法制度など、実際的な講義も含まれています。また、実際に被害者に接するために求められる姿勢や援助技術も習得していただきます。
講座は、被害者支援アドボケーターになるための第一歩である入門講座(全10講)から始めますが、その後、性暴行、ドメスティック・バイオレンス、犯罪被害、子ども虐待などに専門化させたアドボケーターとなるためのアドバンスド講座の二部構成によって、アドボケーターを当NPOで認定する予定です。被害者支援に関する勉強をするために、入門だけ受講したいという方も歓迎です。
来年度に行われる入門講座は、右のような内容で行いたいと思います。関心のある皆様の受講をお待ちしております。
NPO法人 FLC安心とつながりのコミュニティづくりネットワーク
被害者支援アドボケーター養成講座〈入門編〉
日時:5月13日~7月15日まで、毎週火曜日 午後6時半~8時
場所:女性ライフサイクル研究所京都支所 レクチャールーム
受講費:全10コマ 一般 15,000円
学生 12,000円
定員:30名(要予約・前納制)
日程 | テーマ | 講師 |
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第1講 5/13 | 我が国の暴力被害者の実態と支援サポーターの必要性 | 新 恵里 |
第2講 5/20 | 日本と海外の歴史と取り組みの現状 | 新 恵里 |
第3講 5/27 | ドメスティック・バイオレンス | 長谷川七重 |
第4講 6/3 | 性犯罪 | 前村よう子 |
第5講 6/10 | 虐待 | 津村 薫 |
第6講 6/17 | 犯罪被害 | 窪田 容子 |
第7講 6/24 | 被害者の心理 | 村本 邦子 |
第8講 7/1 | 加害者への修復的アプローチ | 中村 正 |
第9講 7/8 | リスニングの技術 | 西 順子 |
第10講 7/15 | 支援者のメンタルケア | 冨永 良喜 |
※講義の順番は変更になる可能性があります。
☆お申し込み、お問い合わせは、NPO法人FLC安心とつながりのコミュニティづくりネットワーク
電話 (06-6354-8156) まで、
お電話またはFAXください。
(ニュースレター創刊号/2002年11月)