活動会員 高岡昂太 本田浩子
暴力防止プロジェクト、と一言で言っても、そもそも暴力を防ぐとはどういうことなのか?暴力が無い状態とはどういう状態なのか?そして暴力とは果たして一体何なのか?その根本的な問題にぶつかります。私たちの考える暴力防止プロジェクトでは、既存の「攻撃性を抑える」という表面的な角度からだけでなく、暴力の無い状態、即ち「平和」という概念を、まずもって探っていく必要があるのではないかと考えます。
3月の第三回勉強会では、その一つのきっかけとして、軍隊を放棄するという「コスタリカの平和概念」について参照しました。
コスタリカは、人口430万人の中米に位置する小国。年の平均気温は22度の常春気候で、その国土は、日本で言うと九州と四国を合わせたくらいの大きさです。なぜこのような小国が「軍隊放棄」、そして独自の「平和教育」を作り上げ、世界的にも評価を得ているのでしょうか?その秘密は、どうやらコスタリカの歴史にあるようです。
コスタリカの歴史を少し紐解くと、1502年にかの有名なコロンブスによって発見されました。その後、スペインによって19世紀初頭まで征服されますが、地理的な理由により、偶然にも戦争無くして独立します。19世紀後半に入ると欧化政策が取られ、世界的にも早い時期に男女平等に無料で初等教育の義務化が成し遂げられます。この頃から教育部門に多くの国家予算が割かれ、世界的にも高い識字率を維持します。世界大戦の影響も国土にはほとんどありませんでしたが、1948年に内戦が勃発し、国民2000人の犠牲を出しました。それがきっかけとなり、1949年に「軍事力の放棄」、1983年にコスタリカの永世的、積極的、非武装中立に関する大統領宣言を発しています。
このように、戦争、そしてその道具である軍事力と距離を置く歴史が、コスタリカの特徴の一つとして見られるように思います。また、その背景として、早い時期から国を上げて教育に力を入れており、特に教育プログラムでは「子どもの時から自分を尊重することが繰り返し強調され、その上で他者との違いを認めること、人の意見を聞き、自分の意見を発表することを学ぼう」という指針をとっています。つまり、「平和」とは「民主主義が完全に守られた状態」という共通理解を、このような教育の精神を共有することによって、国民の中に生み出しています。
非暴力=平和とは、必ずしも言い切れません。また、もしかしたら暴力という行為にも、何かしら意味があるという肯定的意見もあり得るかもしれません。しかしながら、お互いに共存を余儀なくされる社会において、「自分を尊重し、その上で他者を尊重する」というのは、ごく自然なことであり、コスタリカの平和概念を学ぶことによって再認識させられました。
暴力防止プロジェクトは、まだ動き出したばかりのプロジェクトです。今後、さらに色々な問題について考えていかなければなりません。様々な視点を必要とするでしょうし、今回はコスタリカの平和教育の中に、そのヒントを見いだせたようにも思います。今後のテーマとしては、絵本の読み聞かせという手段、ドラマフォーラムという即興劇的な体験、紛争解決スキルで注目されるメディエーション、プロセス指向心理学等を考えています。また私たちは、一緒に活動する仲間も募集しています。今現在必要とされる、暴力防止プロジェクト。様々なアプローチが必要な分、様々な視点も必要です。是非、一緒に活動しましょう!
(ニュースレター第19号/2007年5月)