活動会員 金巨真実
12月2日、霞ヶ関の弁護士会館で開かれた、日弁連主催シンポジウム「離婚と子ども?子の親権・監護法制の現状と展望」に、Vi-Projectリーダーの桑田と金巨の2名が参加してきました。会場は満席で、日本の親権のあり方に対する関心や問題意識が高い事を実感しました。シンポジウムは第一部の報告(ドイツを中心に親権・監護法制の国際比較)と第二部のパネルディスカッションで構成されていました。時間の都合上、会場からの質問の時間が設けられなかったのは残念ですが、日本でこれから共同親権導入を考えていく上で、とても意義のあるシンポジウムであったと思います。そのシンポジウムでの内容をみなさんに少しご紹介します。
第一部では、まず日本の親権を巡る現状と親権概念を明らかにした上で、共同親権の制度を確立している諸外国の親権概念及び離婚後の制度の紹介がありました。アメリカ、イギリス、ドイツでは、「親権」という表現は使われておらず、それぞれ「親の共同責任」、「親の責任」、「親の配慮」というように、親が子に対して有する権利ではなく、子が自立した個人に成長するために、親が子を援助・保護する責任や義務がある事が強調されています。また、離婚に際しては全件に対して裁判所が関与し、子どもの福祉が守られるように司法機関や、裁判所外(民間)の支援が充実しています。一方、日本では、「親権」に関して子の権利である事は明記されておらず、離婚の際には子の利益がおざなりにされているケースが多いようです。また、面接交渉に関する規定もなく、裁判所や民間の支援も整っていない状況です。
特に注目すべきだったのは、ドイツの制度です。日本の民法は、ドイツと極めて似ており、かつては単独親権を採っていました。しかし、1980年に「親権」が「親の配慮」という表現に変わり、1982年には親権の単独帰属が違憲と判断され、1998年の親子法改正によって共同親権が実現しました。このドイツ法の変遷の過程は、日本にとって大変参考になるのではないかと感じました。
第二部はそれぞれの分野でご活躍されているパネリストの方々が、共同親権に関する問題意識や、現状、課題などをそれぞれの立場からお話下さいました。FPICの山口さんは、共同親権導入の前段階として、面接交渉を円滑に行えるようなシステム作りや、親が子の福祉を実現させる為に協力する重要性を説かれました。
以上のように、諸外国が共同親権制度を実現させている中で、日本も子どもの福祉を実現させる為に共同親権導入について考えていかなければならない時期にきているのではないでしょうか。面接交渉や離婚後の支援をしている民間団体が少ない中で、Vi-Projectの活動は、これから益々増えていくであろうニーズを満たす、時流に乗った活動ではないかと感じました。
(ニュースレター第18号/2007年2月)