正会員 桑田道子
3月にベルリン調査に出向く機会に恵まれ、「離婚後の親子支援」についてもヒアリングさせていただくことができました。通常非公開である、家庭裁判所での審判にも同席させてもらい、実際の離婚審判や、子どもの代理人として審判に出席するソーシャルワーカー、弁護士、少年局の人の働きを目の当たりにし、大人であってもストレスフルである「別れ」を経験する子どもたちにとって、最大限、時間と労力を注いで、子どもの気持ちを確かめるよう努め、子どもの力になろうとする大人の存在に、どれほど子どもが力づけられるかということを感じました。
ドイツの離婚は、日本の離婚と違い、すべて、審判を通さなくては成立しません。ですから、離婚と同時に、その後の子どもの養育についても必ず裁判所で話し合う時間がもたれます。日本では子どもの養育権のことを「親権」といい、一般に「離婚後、子どもの親権をどちらがもつか」というようなことがいわれますが、ドイツでは1978年の家族法改正時に「親権」から「親の配慮」という言葉に変更されました。これは、「親が子どもに対して持つ権利ではない」意をあらわしているといわれます。そして、子どもの利益となるよう判断し、機能する人間を審理に参加させる「手続保護人(Verfahrenspfleger)制度」があり、裁判官が子どもの代理人を任命するようです。
また、現在、対立する二者間の調整をするメディエーターと呼ばれる民間の職種があり、ドイツに約2000人いるそうですが(対立する領域は、学校、経済、親子など様々な分野のメディエーターがいるそうです)、今後、「離婚後も子どもにとって、より良い養育環境を『両親』が整えていくこと」を目的として、裁判官が審判時に「家族メディエーター」に相談に行くことを指示していくよう、法律が改正されるとのことでした。
「どのように子どもの気持ちを確かめるか」「離婚のもと、どのように子どもにとっての利益を考えるか」といった点では、Vi-Projectの働きと共通するところがあり、とても参考になりました。かつ、日本の独特なシステムである家裁調停の良さもあらためて認識し、Vi-Projectとしても、より効果的に利用し、連携していけるような道を模索していきたいと思っています。
(ニュースレター23号/2008年5月)