正会員 桑田道子
先日、23回目のミーティングを開きました。日頃、顔を合わせることがほとんどないメンバーですが、家族関係を知らずにサポートにあたることのないよう、ネット上の掲示板、メールや電話、スカイプでのやりとりを活性化し、過去の面会時の出来事、様子等を各々が確認していけるよう、記録の共有などを皆で心がけています。
プロジェクトは現在約10名のメンバーで活動しています。主にプロジェクト発足時からのメンバーである4人のうち2人は面接時のトランスファーや父母と連絡を取り合うコーディネートを担当し、あとの2人は、現在アメリカと横浜在住ですから「ディスタントメンバー」として、ネットでの問い合わせメール対応や資料研究・作成などを担当しています。最初からプロジェクトのことをよくわかっているメンバーが遠距離に引っ越さなくてはいけないと知った時は寂しい気持ちもありましたが、それぞれが離れてもなおメンバーとして関わっていくことを希望してくれ、実際にどんなふうに進めていけるか(物理的に離れていることがモチベーションの低下を加速することもあると思うので…)話し合ったうえ、1年ほどこのスタイルを続けてみました。
ある一つのケースをサポートするとして、1回の面会時のトランスファーの時間はとても限られたものですが、その実施までには面会日時や内容を含め、父母双方の都合を調整することがサポートの一部です。双方の意向を伺いますが、多くは、その意向が正反対のことをおっしゃっている場合も多いですから、どちらもの希望そのものだけを見ていても、解決策が出てきません。言葉に含まれる意味を把握することは非常に難しいことですし、日々トレーニングが必要だと感じるところではありますが、元夫婦の背景、また各回の面会時の様子やこれまでの変化をふまえて、調整していきます。ですから、各回のトランスファーにあたったメンバーの記録もとても重要になります。また、子どもの成長に従って、面会内容も変化していくのが通常ですから、今、目の前で起こっていることや次回面会のことだけに捉われるのではなく、長期的視点で子どもを中心とした家族を見ていかなくてはいけません。「面会実施」サポートにあたり、私たちが配慮すべきことは、数多くあります。
そして、サポート実施と並行して、サポートシステムの基盤を築いていく活動は、各メンバーがそれぞれケース自体を丁寧に追っていきつつ、プロジェクトそのものの活動がミッションから外れていないかフィードバックしていくこと、より多くの人のニーズにあったサポートの提供を検討していくことはなかなか両立が難しい面もあります。そんななか、例えはよくないかもしれませんが、プロジェクトのメンバーが頭(あたま)班のディスタントメンバーと、直接支援にあたる体(からだ)班に分かれて、それぞれ活動しつつ意思疎通していくやり方が随分とVi-Projectに合っているな、という印象です。オンラインで問題点や今後の課題などをブレインストーミングして、オフラインで顔を合わせて話し合って物事を決める、という流れに慣れてきました。
活動に加わっているメンバーも皆、それぞれの仕事や学業を持ち、時間とパワーをやりくりして、「子どもたちのために」とそれだけのために頑張ってくれていますから、メンバーにとっても実りある活動となっていけるようこれからもプロジェクトを進めていきたいと思っています。
さて、今号では、実際に離婚後、お子さんと離れて暮しつつ、面会を実施されている杣木さんの手記をご紹介します。ご自身の経験を通して、離婚後会えなくなる親子がたくさんいる現実(もちろんその事情は様々です)を知り、心を痛め、なにかサポートの一端となることはできないかと、遠方にお住まいですが昨年より正会員となるかたちでVi-Projectの活動を応援してくださっています。杣木さんご自身も、現在は継続して面会が行われるようになっておられ、お子さんとの時間をとても大切に過ごしていらっしゃいますが、決してご夫婦の間に横たわる問題が小さいとか揉めなかったというわけではなく、葛藤の高い状況を経て、なお、子どものために自分ができることは何なのか、を求めて行動され、現在に至っておられます。元夫婦間にはなかったことには出来ない過去があり、相手への怒り、悲しみはある。どうにもその感情を拭いさることはできないけれども、そこから少し離れ、子どもの気持ちに目をやり、何をすべきか考えてみたときに出てきた答えは最初に思っていたこととは違っていた、という杣木さんのメッセージが、いま必要な方に届くといいなと思っています。
面会実施に至るまで
正会員 杣木みお
私は、離婚して間もなく一年を迎えようとしています。今では小学三年生となる息子と別れて暮らすようになって二年半程が経ちます。うち紛争中には、一年半に渡り会えない時期もありました。今は、元妻と新たなカタチを模索し努力しながら、ようやく月に何度か息子に会えるようになりました。この夏には連泊で私の住まいに息子がきてくれて、元妻には感謝しています。
離婚については、調停がはじまり不調となり裁判へ移行。もちろん葛藤や不安や不満もありましたが、裁判による和解で昨年11月22日に離婚をしました。なんの因果か"いい夫婦の日"に・・・。裁判まで至った唯一の理由は、親権・・・。突き詰めれば監護権がたった一つでした。他の全ては捨てました。ただ、どうしても監護権を手放すことができなかったのです。元妻ももちろん親権=監護権を主張しました。息子と私の面会交流について、月に一度で4時間程度の面会交流は認めるというものでした。一年365日のうち、たったの二日間分・・・。
いくら時代が変わってきたとはいえ、両親が揃っていても子育てが大変で難しいのが現実です。私は、ひとり親家庭となる息子に、少しでも両親が揃う家庭に近い環境=別れて暮らす親と頻繁に会える環境を整えてあげたかったのです。両親の離婚は、夫婦関係の解消であって、親子の終わり=親子の絆の断絶となっては絶対にいけないと強く思います。また、私は、両親の離婚が子どもの不幸となることを少しでもなくしたいと考えます。そのためには、離婚してからも様々な葛藤ややりとりが元妻と続き厳しいことを覚悟で、私が息子と暮らすことでそんな環境をつくっていきたかったからです。また当時は、元妻自身の生活が落ち着かない状況もあり、元妻のもとで息子が生活をするのは困難だと考えたからです。
実は、別居が始まってしまった数日後、担任の先生からお聞きしたのですが、当時小学校に入学したばかりの息子が、教室でクラスメイトに「パパとママ、離婚するんだー!」と、平然と言いまわったそうです。その様子を見かねて、先生が、放課後に息子を残し、二人きりで話をしてくださったそうです。先生が息子に「パパは○○君の事が大好きなんだよ」「○○君もパパの事が大好きなんだよね!」と語りかけると、息子は廊下へ突然飛び出し涙を堪えて泣いていたそうです。もう二年も前のことになりますが、息子のこの時の事を想うと、涙が溢れてきます。両親の離婚という状況を息子に強いてしまったことを、心から申し訳ないと今でも思っています。
おかげさまで今は、息子に会えています。これまで、たくさんの方がたに支えてもらいました。だからこそ、今日につながっていると思います。特に紛争当時は、私も元妻も争うばかりでした。今では元妻も彼女なりにとても頑張っています。しかし、本心では、不満は残っています(本当は、息子と暮らしたい)。しかし、日本の現状をみれば、離婚すると我が子に会えなくなることが当たり前の状況のなか、私は息子と会えていること自体が贅沢なんだと思うようにしています。本当に切なく悲しいばかりです。
最近の話ですが、息子にチック症と思われる仕草が多く出るようになり、「息子に会ってやってよ」と、元妻から頼まれるようにもなってきました。元妻の母も仕事があり、大変でもあるようです。余計な事は考えません。元妻の言葉をそのまま受けようと思います。なにより、子育ては本当にとても大変ですから。
私は、離婚問題は(離婚後の)親と子の面会交流に尽きると思っています。また離婚問題は、子育て問題だとも思います。別れようとする夫婦が、子どもの心を最優先にして進もうとしていくことができれば、たとえ辛いなかでも未来は必ず開けると、身をもって強く感じています。一度紛争になると、どうしても当事者同士だけでは進めなくなります。その間も子どもは、日々辛く切ない想いのまま過ごしているのです。間違いなくよくありません。だからこそ、周りの大人や社会の手助けが必要だと思います。
私自身、離婚ということからいろいろな事を考えさせられました。
夫婦ってなんだろう? 家族ってなんだろう? 親子ってどうなんだろう?
離婚は確かに親本人にとっては辛く苦しいけれど、子どもの心、その先にも続く子育てに比べれば、大変なことなのだろうか!?
子どもは、親が与えた環境を受け入れることしかできません。子どものことを大切に考え、知恵と忍耐と努力と理性をもって行動しなければならないと、私は心の底から思います。更なる社会へ、進歩、変化していかないといけないと思います。離婚が両親の人生の選択肢の一つとなってきている今、離婚後の親子関係に真正面から向き合うことは避けては通れないと確信しています。
今の私の心境は、(両親の)離婚<親子の絆, 子育て! です。
(ニュースレター25号/2008年11月)