活動会員 後藤晶子
Vi-projectのサポートも3年が経過しました。プロジェクト発足のミーティングを行ったのは2004年5月ですのでサポート開始前の準備期間と同じ期間の面会サポートの経験も積み重なってきています。
私は、発足直後から参加しており現在は主に面会のサポートにあたっています。最近のこのプロジェクトに関して思うことなどを書いてみようと思います。
現在のVi-projectは、それぞれ仕事をもったり学生生活を送りながらのメンバーですので、実際の面会サポートにあたるスタッフ、問い合わせや面会の日程調整の対応をするスタッフ、リーフレットの制作などにあたるスタッフ等と遠距離に散らばっていながらそれぞれの参加できる場所や日程でVi-projectを運営しています。通常のやりとりは電話やメールで、そして時々は顔を合わせてのミーティングでチーム内の意思疎通をはかるというスタイルも最近定着してきています。サポート開始前の数年間に時間をかけて何度もミーティングを重ねて築いてきたベースがあるので現在のスタイルでもそれぞれのスタッフが問い合わせや利用者への応対にずれがないのだと思います。
ただ、そのミーティングを頻繁に行っていたときの状況と最近の問い合わせやサポートケースの内容には少し変化があるように感じてきました。その変化は、時には社会問題になるような家族間の問題が反映されてきている結果のようにも思います。例えばそれはさまざまな疾病をもつ子どもや、とてもとても幼い子どもがサポートの対象となっていたり、DVがあったり(子どもへのDVがあった場合の面会は受けていません)などと一様ではありませんが、それぞれについて精査して私たちが対応できるかどうかよく検討しなくてはならないケースが増えています。しかしこれも少しずつですが、経験を積み重ねてきているので、可能な範囲で現在のサポートの仕方も変化させながら対応していこうと最近話し合いを始めています。
現在サポート中のケースでも時としてスムーズにいかないこともあります。でも面会を実施している子どもたちがこれから会う別居親とのひとときを楽しみにして話す様子や、お楽しみの時間を終えて同居親への元に満足そうに帰っていく姿を思うと中断させることのさらなる弊害を考えずにはおれません。
面会は双方の親の協力があって初めて成立するものであり、それは時には忍耐や譲歩も必要です。今面会を行っているケースの多くの親たちはそれをやってのけているのだと考えると、私たちのサポートもよりきめ細かく対応していこうとがんばる力をもらえるように思います。
正会員 桑田道子
Vi-Projectでは、毎回の面会後に両親からそれぞれ記録を提出いただいています。同居親からは「面会前後の子どもの様子」を、別居親からは「面会時の子どもの様子」です。今号では、「面会前後の子どもと同居親」についてとりあげてみます(「子どもと別居親」はまた別の機会に…)。
面会前に(後にも)緊張や興奮があらわれる子ども達もいます。おねしょをしたり、なかなか寝つけなかったり、ぐずったりという形であらわれることもありますので、直面する同居親は心配し、こんな状態になるなら面会しないほうがいいと考えることもあるでしょう。そんな子ども達の動揺は面会時には見られず、家での様子が主ですから、別居親にもわかりません。
けれども、今、Vi-Projectにつながっておられる同居親は皆、その緊張や興奮が子どもにとって負担となっていないか、どんな動揺か、など考えながら、そのフォローをされています。周りの大人の心配や苛立ちを映し鏡のように子ども達があらわしていることも多いですから、まずは同居親が少しずつ自分の気持ちを整理することに配慮しながら、子ども達に関わったり、子ども自身が不安になっているときにはその不安を取り除けるように子どもと話し合ったりされています。
子ども達の年齢や性格、両親の葛藤具合にもよりますが、多くの場合は面会が継続されていくうちに徐々にそのような動揺もおさまっていくようです。面会が特別なものではなく、子ども達にとっても当たり前の、日常に組み込まれたものになり、慣れていくことで気持ちの揺れがおさまっていくこともあるでしょう。
「慣れ」以上に、子ども達の不安を取り除き、安心して面会できるために、同居親がされている大きな助けに「子どもの情報を別居親と共有すること」「次の面会の話をすること」があります。子ども達が今、興味のあることや好んでいること、保育所や学校での様子を同居親が事前にVi-Pに伝えてくれ、その中から別居親が面会の行き先や自宅での過ごし方、プレゼントを選ばれるなどされます。別居親にとっては辛いことのひとつでもありますが、やはり限られた面会の時間だけでは、子どもについてわからないことはたくさんあります。ですから、より子どものことを知り、親子ともども楽しめる交流となるためにも、子どもに関する情報の共有に協力してくれている同居親の姿勢はありがたいものです。
また、次の面会で行く予定にしている映画や釣り、公園の話や面会で会う祖父母、親戚の話を、事前に同居親が子ども達にしてくれることが、子ども達の安心にもつながります。どこへ行くのか、何をするのかが不安な子どももいます。別居親との面会は同居親を裏切ることなんじゃないか、面会を楽しむのはいけないことじゃないか、と考える子ども達もいますので、同居親から「今度はサッカーを観に行くんだって。よかったね。○ちゃんの好きな△選手が見れるかな」などと話すことで、子どもも「自分が別居親と交流を持つことを同居親は受け入れてくれている」と感じることができて、なによりの安心ともなります。
両親間の葛藤が高かったり、まだ解決できない問題を抱えているときには、面会を支持できない同居親も多くいます。それは、同居親がそう考えるに至る過去があるからだと私達も思っています。賛成できない気持ちを抱きながらも、子ども達の様子を見、話をして、面会実施のために努力されている姿には頭が下がります。離婚後、元配偶者に対するネガティブな感情はさっぱりどこかへいき、自分達の新しい生活を満喫されている方もいれば、普段はそうだけれど面会を通して元配偶者の存在を感じ、怒りや恐怖がよみがえったり、あるいは常に元配偶者への気持ちを抱き続けて苦しんでいたり、いろいろな方がいます。
子どもの成長にとってプラスとなる別居親との交流は、同居親の苦しみのうえに成り立つものではありません。笑顔で送り出している同居親の気持ちを忘れずに、私達もどのようにサポートをしていけるか、これからも考えていきたいと思います。
(ニュースレター31号/2010年5月)