正会員 桑田道子
<前号に引き続き> Vi-Projectでは、毎回の面会後に両親からそれぞれ記録を提出いただいています。同居親からは「面会前後の子どもの様子」を、別居親からは「面会時の子どもの様子」です。今号では、「面会前後の子どもと別居親」についてとりあげてみます。
私たちがサポートにあたる初回というのは、数ヶ月ぶりに子どもに会う方が大半です。なかには、離婚が整わないために面会できず、1年やそれ以上会えずにおられるようなこともあります。ですから、「やっと会える!」という気持ちはひとしおで、子どもと会って何をしようか、子どもがどんなに成長しているか、楽しみであまりよく眠れなかった、というようなこともよく聞きます。
面会を楽しみにワクワクする気持ちの反面、「子どもは自分を覚えているんだろうか?」「どんな気持ちで会いに来るんだろう」と心配だったり、緊張したり、さらには「今日、ちゃんと来てくれるだろうか?」「会えるのが今日っきりになったりしないよな?!そんなことになったらどうしよう」と不安や心配でいっぱいな気持ちを抱えて、面会に臨まれる方も多くいらっしゃいます。
サポート開始以降、当日のキャンセルは今までないのですが、それでも「本当に来てくれるだろうか」と直前のキャンセルを覚悟しながら待ち合わせ場所に来られたり、通常は、約束の時間に遅れるときにはスタッフから連絡を入れますが、同居親子の到着は早くスタッフとも合流できているけれども、連絡事項などの話の時間が長く、結果的に別居親との待ち合わせ時間に2、3分遅れるというようなことはこれまでにもあり、その数分の遅れ、子ども達の到着を待っている時間に、「今日は会えないんじゃないか」という不安が募り、調停・裁判中に会えなかったときのことが思い出されて胸が苦しくなった、というような気持ちを聞かせていただくこともありました。
ただ、概ねこういった心配も、面会が回を重ね、継続していくことによって、別居親と子どもの双方が「これっきりでは決してない」と確信していけることが、安心につながり、リラックスして良い時間を過ごすためには不可欠なものとなっているように思います。
面会は、(今では関西に数少なくなった)遊園地や公園、美術館、野球やサッカー観戦、映画鑑賞と様々に子ども達が楽しむプランを考えてきておられますが、以前は、怖がったり、背が足りずに乗れなかった乗り物に乗れるようになった、ボールが打てるようになった、何度も何度もあきらめずに出来るまで挑戦していた、以前は子ども用の映画でもじっと座っているのがしんどそうに見えたのが、内容を理解しているのか90分静かに見入っていた、というような楽しい時間のなかでの子どもの成長を感じて、言葉にしておられます。
面会場所と自宅が近い方は、家での時間も上手に過ごされ、料理をしたり、昔の写真を見たり、子どもの年齢や進度にあわせてワークを用意して勉強を見てやったり、「遊び疲れたのか子どもがうとうとしだして、一緒に昼寝しました。一瞬、もったいない気もしたが、寝顔や寝起きの顔は知らないのでこれはこれでよかった」というようなこともありました。一緒にお風呂に入ったり、子どもが寝つくまでお話をきかせてやったり、そんななにげない時間がキラキラしてみえると聞かせてくれたこともあります。
毎回の記録の多くはどれも心温まるもので、面会に備えてあれこれ準備されたり、工夫されている様子が伝わってきます。【兄妹とパパとの面会】いつも子ども達はパパと会うのを本当に楽しみにやってきて、これまで何度もプールや温泉を楽しんでこられたのですが、「妹の成長とともに、更衣室をどうしようか、男風呂に入るのはそろそろやめたほうがいいかもしれない」と心配されていたり。
【未就学男児とパパとの面会】まだ歩くのもおぼつかない幼少から数年面会を続けてこられたある方は、「今まで、子どもが昔のことや離婚のことを口にすることはなかったが、食事をしに入ったレストランで人数を聞かれて『2人』と答えたときに、子どもが『ママと一緒にいたときは3人って言ってたん?』と聞いてきた。子どもも段々といろいろ考えたり、わかるようになってきて、知りたいこと、感じていることがあると実感した。きちんと話をしてやりたい」と話されました。これまで状況に応じて、父母ともに何度も子どものためにどうしていくのが良いか検討してこられた方々なので、父息子の絆が年月とともに太く、育っている様子を見せていただいています。
【兄弟とパパとの面会】では、「ママはパパと喧嘩して逃げたんでしょ?離婚したけど、仲良くなれないの?パパには好きな女の人がいないの?なぜパパとはたまにしか会えなくて、すぐにわかれなければいけないの?パパは寂しくないの?」と何事もまっすぐに質問してくる弟と、それを横で聞き耳を立てて真剣に聞いている兄、どちらもかわいいし、成長したなと思うし、こんな気を遣わせて二人には申し訳ないと思うし、二人が今後も立派に成長していくように出来るだけのことをしたいと思う」と記録を寄せていただきました(記録には父の返答も書いてあり、それも胸をうつものでした)。
娘との会話を一語一句もらさずに記憶にとどめておられるぐらい、真面目に、子どもとの時間を大切にされていたり、子どもとの面会を最優先に考え、面会日時の設定も「母子の都合にあわせます」とこれまでの十数回、完全に母子の予定にあわせて都合つけられた方(お仕事柄かなり忙しい方)もいらっしゃいます。
こういった親子の時間が子どもにどのような影響を与えているのか、まだわかりません。けれども、子どもの方を向いて、父母が協力していける限り、必ず子どもの自信と力とにつながってくれるものだと私達は信じています。
(ニュースレター32号/2010年8月)