正会員 桑田道子
夏休みを控えたこの時期、Vi-Projectでも夏休みの皆さんの面会調整にとりかかっています。日頃は日帰り面会の方々が、夏休みは泊りがけになったり、遠方へ旅行されたり、と子ども達の学校休みにあわせて、変化するケースが多くあります。
初めての宿泊面会のときには、同居親も「ちゃんと世話してくれるのかな」「飛行機怖がるんじゃないだろうか」「夜、寝れるだろうか」と数々の不安を表現され、「念のために」と何種類もの薬の入った救急袋を渡されることもありますが、元気に帰宅する子ども達の顔をみて一安心という感じです。
何度か別居親子(父子)の小旅行をされるようになったあるケースでは、母子宅のテレビで遠方の動物園を見て「ここに行きたい!」といった子に母が「そうやな~、パパに連れていってもらったら」と返事されたそうで、その後、その提案が母からVi-Pにあり、父子で行かれる、というようなこともありました。
別居親は、日頃できないこと、「一緒にお風呂に入る」「一緒にお布団に入る」「寝るまで絵本を読んでやる・お話をきかせてやる」そういった日常の1コマを共有でき、喜びを伝えてくれています。「プランターにネギを一緒に植え、『今度はこれを一緒に食べような』と言ってます」など、これっきりじゃないこと、次へとつながっていることを親子ともどもで実感できるやりとりはとても大切なように思います。
同居親のなかには「仕事をして、子育てをして、毎日忙しくて大変。そのうえ休日に面会させないといけないのは、すごくしんどいこと。」と言われる方がいらっしゃいます。確かに、大変なことだと思います。仕事を終えて、子どもを迎えに行き、帰宅後約2時間位の間に、ごはんを用意して食べさせ、お風呂に入れ、寝かしつけ…と片時も休む間なく慌ただしく過ごしているのが日常なのかもしれません。それは、やはり大変な日常です。容易に想像できます。 そして、その苦労を別居親に理解してほしいと言われる同居親もいます(多くの場合、「理解してほしい」というよりは、「あっちは全然わかってない」という表現ですが)。
ただ、その大変さ、は多くの場合、別居親には伝わりません。「それでも、子どもの顔を見れるなら、また頑張ろうって思える。子どもの世話の大変さは大変さに入らない」と別居親の反論を招きやすいのです(なかには、「それが嫌なら子どもをこちらへ渡せ」とさらに子どもの奪い合いを始めてしまうようなこともあります)。
別居親の考えは、子どもが聖人化されて、子育てに苦労なし、と非現実的な考えが含まれているように見えることもあります。けれども、やはり、それは子どもと一緒に暮らしていない現実から生じている一面であり、その別居親の辛さは言葉以上のものなのだろうと思います。
Vi-Projectは、面会交流が、出来る限り子どもにとって、特別なことでなく日常の出来事になっていってほしいと思いながら関わっています。特別なことである以上、多くの子どもはどう振る舞うかべきか気を遣うし、悩みます。面会の場が子どものわがままを助長させてしまうようなこともあるかもしれません。
そもそも、面会は、子どもにとって「非日常的な出来事」であるように思います。遠足のようなものかもしれません。けれども、それが継続的に実施されることによって、子どもにとってもあたりまえのようにスケジュールに組み込まれている、「日常の出来事」に変わってきます。次、いつ会えるのか心配しなくてもいいし、なにかあったら連絡できる安心感をもって、別居親子の交流が続いていくことが親子間の安定にも影響するものです。そしてそれは同居親の応援なくしてはありえないことです。私達も、家族のなかの「誰か」だけへのサポートではなく、子どもと父母、家族みんなへのサポートとなるよう、より意識していきたいと思います。
楽しい夏休みをお過ごしください!
(ニュースレター36号/2011年8月)