理事 桑田道子
前号に引き続き、ドイツの面会交流支援についてご紹介します。
●シュトゥットガルト子ども保護連盟 (Deutscher Kinderschutzbund、以下DKSB)
DKSBはドイツ全域に所在し、様々な家族支援プログラムを提供している民間の支援団体です。そのうちのひとつ、シュトゥットガルト子ども保護連盟では、養育相談・子どもの電話相談・親への教育プログラムなどに加え、少年局や心理相談所との協働で「別居・離婚家庭を対象とした支援プログラム」が提供されています。
①別居、離婚相談
②親と子どものプランづくりのためのサポートプログラム
(両親が和解に基づく合意に達するための支援をする新しいプログラム)
③保護下の面会交流サポートプログラム
(両親が自分達だけで面会交流を執り行えない場合に、DKSBでスタッフの保護下のもとで交流する)
④別居・離婚家庭の子ども達のグループプログラム
⑤ステップファミリーのためのプログラムなど
また③よりも利用しやすい保護下の交流として、「子どもとコーヒーでも飲んで、語らいあいながら交流しましょう」という場を『コーヒーパウゼ(コーヒー休憩)』と名付け、提供しています。
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Vi-Projectでは、弁護士事務所以外での面会への同行・付添は引き受けていません。その理由は、大きく2点あります。ひとつは、リスク対応が現時点のVi-Pでは不十分なためです。2005年、Vi-Pの支援内容をプランニングする参考に北米視察し、訪れたいくつかの面会センター(監視・監督付き面会センターなどと訳されます。Supervised Visitation Center)では、どこも屈強なセキュリティスタッフが待機していました。元警察官のスタッフや大柄な男性が、必ず複数あるセンターの戸口に立ち、金属探知機が常備され、車の鍵は必ずスタッフに預け…と利用者とスタッフの安全を守る手厚い策が講じられていました。もちろん、日本と北米とでは面会にまつわる法律も異なり、Vi-Pと北米の面会センターでは扱うケースの危険度も違っているとは思いますが、そのようなセキュリティ設備をみた以上、気軽に引き受けて良いものではないと考えています。さらには、子どもとの交流が別居親の生死に多大な影響を与えうることも、いくつかのケースから実感しています。やはりこの別居親子間の面会交流というものは非常にデリケートかつ深刻な事柄であることを常々我々も認識しておかなくてはいけないと思っています。
もうひとつは、同居親が、面会にスタッフの同席を希望する背景には、「別居親と子どもだけにはできない、子どもを別居親に任せられない」と別居親に対して不信感を抱いていることもあります。
そのような気持ちが処理できずにいる両親間のもとでの面会は、子どもにとって負担とならざるをえない、子どもにとってしんどい思いをさせることになる可能性が高いのではないか、と考えているためです。
ただ、同居親による不信感の要因には様々な双方の事情があります。また、いくつかの試行的同席面会経験から、Vi-Pの柔軟な対応が、子どもと両親の安心を生み、それが次回の面会につながるという面があることも事実です。
そういった経緯をふまえたうえで、DKSBの『コーヒーパウゼ』は私達が実施するにも良い試みのように感じました。また、離婚後の子どもの養育に関して両親が合意にたどりつけるようサポート(上記②)することは、Vi-Pのサポート内容(コーディネイト)に類似したところもあり、今後の日本にますます必要となってくるものだと思います。Vi-Pのサポート内容に生かしてみたい多様な知見を広める機会に恵まれ、感謝しています。
☆2012年6月、Vi-Projectのサイトが出来上がりました! http://www.vi-p.org
(ニュースレター40号/2012年8月)