正会員 桑田道子
これまで離婚後の離れて暮らす親子の面会交流については、法律で明記されておらず、家庭裁判所などで争われる際には、「子の監護について必要な事項」に含まれるとして、扱われてきました。「非親権者と子どもは、一切関わりをもたないほうが良い」とされていた時代を経て、1980年代後半より、家庭裁判所で面会交流が認められるよう変化してきた経緯がありますが、それでも法律には明文化されてこなかったので、離婚後の面会については人々の考えが「会わせるなんてとんでもない、会わせないで良い、会わせた方が良いかもしれない、会わせるべき」と幅広いものでした。
この点が、昨年5月に成立し、今年4月1日より施行されている民法等の一部を改正する法律により改正されました。改正後の民法766条において、離婚後の子の監護に関する事項として、面会交流や子の監護費用(養育費)が、また、これらを定めるにあたっては子の利益を最優先に考慮すべきと明記されるようになりました。
この改正を受け、離婚届も変更されました。未成年の子どもがいる場合には、面会交流について夫婦で協議しているかどうかをチェックする欄が追加されています。
チェックするだけですので、本当に話し合いをしたのか、取り決めがなされているのかを確認する手段はありませんし、その取り決めが守られているかを見守る手段もありません。けれども、今回の法改正により、離婚にあたり、面会や養育費については両親が話し合うべき事柄だと注意喚起してくれる役割を離婚届が果たしてくれるのではないかと期待します。
離婚をするということは、父母双方が互いに信頼を失っている状態が多く、そのため親としても相手のことを排除してしまいがちです。けれども、子どもにとっての離婚後の生活を考えるにあたり、離婚しようがしまいが、子どもの責任を父母双方が担っていることを両親が認識しておくことは重要ではないでしょうか。
いざ離婚が決定しても、夫婦間に未解決の問題や、葛藤が横たわっている場合がほとんどですし、その感情が面会に投影されていくことも多々あります。別居後も交流を継続していくことはそれだけ争いの種も増えかねません。「では、会いましょう」となっても、面会を通して相手の悪い所探しをしてしまいがちですし、非親権者が親権を取り戻したいと考えているような時には次の裁判で使ってやろうと材料集めをして、面会をさらに自分に有利、相手に不利なものをみつける場にしてしまうようなこともあります。たとえば、「子どもが風邪をひいていた→体調管理が出来ていないのではないか。汚れた靴をはいていた、服のサイズが合っていない→ちゃんと養育できていない。ゲームセンターに連れていった→子どもに悪影響」など、面会が新たな争いの火種となりやすいわけです。
けれども、そんな材料集めの面会が子どもにとって楽しい時間となるわけがありません。元夫婦間での争いを引きずって、子どもになんら良いことはありません。争っている親のもとでの面会は、子どもにとっては両親の間で板挟みを感じる、しんどいものとなりがちです。ですから、Vi-Projectは、≪離婚後、離れて暮らす親子がどんな関係でいることが、子どもにとって幸せとなるか、お父さん、お母さんどちらもが考えていきましょう≫と両親に伝え続け、働きかけ、一緒に考えていくことが私達の役目だと思っています。
(ニュースレター41号/2012年11月)