理事 桑田道子
9月13-14日、SAJ(ステップファミリー・アソシエーション・オブ・ジャパン)と明治学院大学社会学部付属研究所による「ステップファミリー支援に必要な知識とスキル~米国の教育プログラムを学ぶ2日間」が明治学院大学で開催され、コメンテーターの一人として出席させて頂きました。
【ステップファミリーのステップとは日本語で「継」を意味し、父母どちらかが以前の婚姻でもうけた子どもを連れ再婚した際に誕生する子連れ再婚家族のことを指し、ステップファミリーと呼びます。】
SAJのスーパーバイザーでもある社会学者の野沢慎司先生が尽力くださり、アメリカから研究者を招き、「ステップファミリーとはどのような家族であり、特有の課題とは。継親子関係において実親や継親はどう振る舞えばよいのか、どのような支援が有効か」といったことをテーマに、実践的なステップファミリー支援について学ぶ機会となりました。
今回来日された3名のうちの一人、パトリシア・ペーパーナウ先生(ハーバード大学医学大学院精神医学科心理学臨床指導員)は、「ステップファミリーの発達段階」を発表されている方で、SAJでも2001年からこの発達段階を紹介してきました。
ステップファミリーでは、実親と継親で子育てが共有できなかったり、一方には最重要課題に感じられるトラブルがもう一方にはまったく理解できないというようなことが起きやすく、そのような時には、この先この苦しみがずっと続くのではないかと終わりが見えない状態に陥ってしまうようなこともあります。けれどもその時に、これは多くのステップファミリーが辿る道程で珍しいものではないこと。そして必ず先があることを知り、行ったり来たりを繰り返しながらも、家族として発達していくという概念を知ることで、日本の多くのステップファミリーも救われてきました。知識が力となることを実感する存在であり、SAJでも大切にしてきた情報のひとつです。
ペーパーナウ先生の「ステップファミリーを生きる~そこにある挑戦を理解し立ち向かう」というレクチャーでは、ステップファミリーが築かれる際に生じる5つの主要な課題に、3つのワーク(心理教育/つながりや思いやり、共感を高めるために対人スキルを身につけるワーク/カウンセリング[intrapsychic])を用いて専門家が支援していく内容が紹介されました。
ステップファミリーの構造が、継親の子育てを権威主義的に、実親の子育てを許容的に引き寄せていく可能性があり、うまくいかない場合は苦痛の多い二極化になりうることは非常に興味深い指摘でした。このことは離婚後の面会交流をどう考えるかにも関わる視点です。日本における子連れ離婚家族の「権威的子育て」と「権威主義的子育て」の違いと影響についても整理してみたいと思いました。
またフランチェスカ・アドラー=ベーダ―先生(オーバーン大学教授)、チェルシー・ガーノー先生(ミズーリ大学助教授)は研究開発されてきたステップファミリーのための支援プログラムSmartStepsを紹介くださり、VTRを見たりワークを体験しながら、参加型プログラムの効果的な実践方法を学びました。実は私も院生時代に、このフランチェスカ先生のSmartStepsの研修を受けにアメリカへ行き、日本で使用させて頂いているご縁もあり、今回、再度丁寧な研修を受け(しかも日本語通訳付き)、内容への理解を深めることができ、とても勉強になりました。新たに、Vi-Projectの活動へ還元していけるようにと思っています。
(ニュースレター第47号/2014年11月)