トラウマを受けた子どもへの援助サービスを提供するために、子どもプロジェクトを結成しました。子どもたちにどんなサービスが必要とされているのか、私たちに何ができるかを検討するため、2月より月1回のペースで研究会を開催しています。
第1回ミーティングには8名が参加し、文献を分担して海外の実践例を発表し合いました。第2回では13名が参加、実践に向けたそれぞれの企画案を発表しました。ゲストとして冨永理事を迎え、後半で臨床動作法のワークショップをやってもらいました。以下、参加者たちからの報告と感想です。(村本)
■石川麻耶子(活動会員/滋賀県八日市市保健センター心理判定員)
対人援助に関わろうと志す人間が、「子ども達の為に、何かやっていきたい」とそんな漠然とした思いで集まったのが、「子どもプロジェクト」のはずでした。ですが、「思いを形に表す」ことの難しさを考えることなく、あっというまにFLCの所長である村本邦子先生は、プロジェクトを推進されました。
勉強会を催して、2回目で既に託児ボランティアと共に、「子ども達に、アクションを起こす」計画が実行に移されることになっています。目を見張るほどの前進力、私はここにFLCの活動の原点を見たように思っています。本格的な始動は、今年後半になりそうですが、ともかく「子どもプロジェクト」の活動を、1メンバーとしてとても楽しみにしています。
「私にも何かできるのだ」という小さな自信を、「子どもプロジェクト」からもらっています。
■安田裕子(活動会員/立命館大学大学院応用人間科学研究科M2)
子どもの表情、子どもの仕草、子どもの発する言葉…子ども達に接していると、そのありのままの様子やみなぎる力に魅せられ、励まされることが本当に多い。生の感情をそのまま素直にぶつけてくる子ども達の、今ここを生きる姿に触れることで、笑顔の大切さや表情豊かに語り合うことのすばらしさをしみじみと感じ、さらには、今ある力で‘なんとかやってみる’ことが重要なのだということにあらためて気付かされるのである。
このように、子ども達から教えられることは実に多い。それだけに、次世代を担う子ども達には、是非とも希望を持ち続けて生きてほしいとつくづく思う。確かに社会では、色々なレベルでおかしな事件が絶えないが、また、期待が持てると感じられることも沢山ある。そこで子ども達1人1人が内に秘めた可能性を発揮できるかは、周囲の支援体制にかかっていると言えるだろう。とりわけ、子どもの生活環境は規定的なものにならざるを得ない。よって私たちは、その生活圏となるコミュニティーにしっかり目を向け、子ども達が安心し、そこで人と人の間に希望を繋げ合って生きていくことができるような基盤を形成すべく、援護活動を展開することが今まさに求められているように思う。今回子どもプロジェクトに携わるに際して、こうした想いを持ち、子ども達のたくましさに見習って、今私にできることをやっていきたいと考えている。
現在子どもプロジェクトは月1回のペースでミーティングを行い、10月からの本格的な実践に向けて動き出した状態にある。2月のミーティングでは、トラウマ関連の海外文献を和訳して紹介し合った。その内容は、トラウマを抱えた子ども達に接する時の基本的態度、子ども達に実践できる数々のユニークなトレーニング技法、学校におけるトラウマ予防カリキュラムについてなどである。そして発表後に、対象とする子どもの年齢や実施内容など、具体的に詰めるべき点が確認された。これを受け、3月のミーティングでは、各自が実践したいと希望するプログラム案を持ち寄った。当日は、当事者と周囲の人物が危機後に対応できる一連のプログラム、場面の認知と予測や対処を考える絵カードゲーム(SST絵カード)、指人形によるお話作り、フィンガーペインティング、身体を動かすワーク(動物の真似)、感情を表現するワーク(絵に描かれた顔と同じ表情を作る)など多彩な企画案が出された。さらには、ミーティングにご参加くださった兵庫教育大学の冨永良喜先生から、貴重なコメントをいただくこともできた。そして発表後には、冨永先生より、臨床動作法の‘軸’について実践を交えてご教示いただいた。頭の先から腰まで軸を通してしゃんとして物事に向き合う時と、体を弛緩させてリラックスする時のメリハリの大切さ、体に通る一本の軸を意識しながら、各部位の力みを緩めていくことによる自己の身体への気づきなど、まさに身をもって感じることができる実践だった。身体と感情は結びつき、お互いに影響し表現し合うものであり、そこに着目した臨床実践が非常に有効であるということが改めて確認できたように思う。
さて、今後の子どもプロジェクトであるが、3月に持ち寄った案を実践に移すべく計画してみようということとなった。5月下旬から大阪のドーンセンターで、ワーキングマザーのストレスマネージメント講習会が実施されるが、その時託児所に集まる子どもを対象に、何か子ども達が楽しめる遊びを企画するという方向で進めている。4月のミーティングでは、その計画実施案の発表と検討を行う予定である。全体を通した展望としては、対象者となる子ども達にいかに楽しんでもらうことができるかを考えつつ、メンバーみんなで楽しみながら夢を持ってプロジェクトを展開していきたいと考えている。
■活動会員
私は生まれたときから自然体で当たり前のように立ってきたので、自分の立ち方、力の入れ方にわざわざ注意を向けるということはありませんでした。そのため、何気なく立っているときに自分がどうしているのか、そして、自分にとってどのようにするのが一番いいことなのかを考えるよい機会となりました。冨永先生が、常に“こうしなければならないというわけではなく本人が一番しっくりくるものを選んだらいい”とおっしゃっていたことが印象的でした。このことは、子ども達と接する場合にも多くの場面で用いることのできる姿勢なのだろうと思いました。
■活動会員
23日に行われた子どもプロジェクト会議に参加させていただきました。
10人ほどの少人数の中で自分の企画を発表し自由に意見を言い合える場だったため、新たなアイデアがどんどん出てくる、そんな活気あふれる会でした。また、会議後半では、兵庫教育大学の冨永先生による臨床動作法の指導を丁寧にしていただき、本当に充実した1日でした。まずは5月のストレスマネジメントと並行して開始される子どもプロジェクトで、今回の会議を活かしたよりよいプログラムづくりを実施を行っていきたいと思います。今後ともよろしくお願い申し上げます。
■渡邉 佳代(活動会員/女性ライフサイクル研究所)
学生時代に、子ども、特に「思春期」・「不登校」をキーワードとする子ども支援に関心を持って研究を進めてきたので、今回初めて子どもプロジェクトに参加させてもらいました。様々なフィールドを持っていらっしゃるメンバーの発表を聞いて感じたことは、こころと身体のつながりに注目した企画が多いなということです。
昨今の心理ブームの中、何かとこころの問題にだけ目を向けてしまいがちになりますが、改めて、こころと身体のつながりの大切さを考えるきっかけになりました。折りしもその日は、冨永先生による動作法のお話も聞けたので、自身の身体の声に耳をすませることによって、こころの動きを感じ取れたようにも思います。地域の子どもや親たちのニーズ、ひいてはその背景にある社会問題にも敏感になりながら企画を立てていく-また、自分のこころと身体の声をも感じ取っていく-と、このプロジェクトに参加することで、私もこれから成長していくことでしょう。1年後の自分が楽しみです。
■小田裕子(活動会員/女性ライフサイクル研究所)
「子どもプロジェクト」での企画なので、対象は主に子どもとなるのだろうが、結婚前の働く女性(家庭がないためワーカホリックになったり、情緒不安定に陥りやすい)、子育て中の母親、壮年期・高年期の妻、などストレスフルな現代人に広く効果的と思われる企画が多かったように思う。提案された企画を別個に進めていくだけではなく、シリーズ化した継続セッションとし、一連の流れによる効果が期待できるようなプログラムが立てられたら面白いかと思った。たとえば、
・思考・感情・行動を振り返りより方向へ転換していくプログラム
・感受性・感性を揺すぶり、自らを解し、開放していくプログラム
→フィンガーペインティング、コラージュ・・・
・心身相関に基づき、実際に体を動かし、体からの爽快感を得る、体から心、己を見つめるプログラム
→うどん作り、ボディーワーク、動作法・・・
以上の3本立てにして一連のプログラムを考案するというもの。色々な人の興味関心、情報があるため、考える幅が広がるし、現場を持たれている人もいるため、現場のニーズ調査も可能かと思うので、現代人のニーズに見合ったFLCプログラムを具体的に考案していくことを楽しみにしている。
(ニュースレター第3号/2003年5月)