活動会員 安田裕子
2005年2月27日(日)、「DV家庭で育った子ども支援チーム」で、昨年プログラムに参加された母子を対象に、同窓会を開催しました。
2004年の1月から4月にかけて、DVのある家庭で育った子どもとその母親3組(内1組は兄弟で参加。母親3名、子ども4名)に、事前インタビューと事後のフォローアップを含めた全8回のプログラムを実施したのですが、それに参加された親子を対象に開催いたしました。実施直前になって諸事情により、参加される母子が1組という状況になってしまい、一時は開催すること事態が危ぶまれました。1組では、同窓会に参加することでかえって淋しい想いをされるのではないか、1年ぶりに他のメンバーに会うことを楽しみにされているだろうにと、我々スタッフが懸念したのです。とりあえずは、ご本人にこうした現状をお伝えしたうえで、改めて参加の意思を確認することにしました。お電話をさしあげると、やはり、参加を希望されているお母さんは、他のメンバーに会うことができないことについて非常に残念に思われていました。しかしながら、同窓会を非常に楽しみにされていたのも事実でして、それならばということで、予定通りに実施することにしました。
当日、昨年は幼少のためにプログラムに参加することができなかった下のお子さんも一緒に親子3名で来ていただき、スタッフ4名を合わせた計7名で、アットホームな同窓会を開催することができました。およそ10ヶ月ぶりに再会したのですが、その親子の変わらない姿を確認することができたのは、非常に安心できることでした。とりわけ、昨年のプログラムで子どもスタッフをしていた私にとって、真っ赤なほっぺでニコニコと微笑みを絶やさない子どもの表情がとても印象的であり、その明るい笑顔は以前のままに、しかしひとまわりも大きく成長した姿をみると、なんだかとても嬉しいような懐かしいような気持ちでいっぱいになりました。
同窓会は、午後1時から午後2時30分まで、1時間30分で開催しました。前半の午後1時から午後2時までの1時間は、怒りの感情をコントロールするワークを実施しました。その目的を、(1)怒りは感じてよい感情であることを確認し、(2)怒りの感じ方や表現方法を共有し合い、(3)怒りの適切な表現方法や対処法を学ぶことの3つに定めて、親子で一緒に学ぶことができるようなものを用意しました。
まずは、導入として、昨年グループで学んだことについて振り返りを行いました。子どもは小学校低学年で、昨年実施したプログラムのなかには、理解することが難しいものもいくつか含まれていましたが、とりわけ暴力について学んだことなどをしっかり記憶しているのには驚きました。改めて、プログラムの意義を感じることができたように思います。
引き続き、最初のひとこととして、表情カードを用いて、今の気持ちを言葉で表現するワークを行いました。表情カードには、泣き顔、笑い顔、怒り顔、しょんぼり顔など、表情豊かないろいろな種類のものを用意しましたが、昨年の子どもグループでもそのカードを使用したこともあって、子どもには取っつきやすいワークのようでした。子どもが、目の前いっぱいに広げられた数多くの表情カードの中からありったけの笑顔のカードを集め、にっこりと笑いながら今の自分の気持ちだと表現した際には、みんなの表情に笑みが溢れ、よりいっそう和やかな雰囲気になりました。
次に、様々な気持ちがあることを感じてもらうワークを行いました。4つの風船がふわふわ飛んでいる絵(風船のそばには、「うれしい」「かなしい」「おこった」「たのしい」という感情を表す言葉を記している)が描かれているシートを1人1枚ずつ渡し、その風船に色を塗る作業を通じて、ひとつひとつの感情を感じてもらうようにしました。みんなそれぞれ、塗る色も違えば塗り方も異なり、同じ感情であってもその表現の仕方は個々人で様々に異なるのだということがよく感じられました。
このように、様々な感情があるのだということをしっかり感じてもらったうえで、今回のメインである「怒り」のワークを行いました。怒りの感情を感じた時にはどうするかについて、(1)最近(あるいは、最も印象に残っている)怒りを感じた出来事は?(2)その時の感情は?(3)その時、あなたはどうした?(表現方法、対処法など)、という順序で、怒りの気持ちについて、具体的に考えてもらうようにしました。そして、それぞれが書いた用紙をホワイトボードに張り出し、鑑賞する時間を設けました。
鑑賞後、気になる表現や対処法について取り上げるようにしたのですが、書かれた内容をみんなで共有する時間をもう少しじっくりともつことができればなお良かったというのが反省点です。これは、スタッフ全員が共通に痛感したことでして、是非とも今後のプログラム実践に生かしていきたいと考えています。そしてさらに、色々な感情があることを学ぶワークのまとめとして、『気持ちの本』を朗読しました。怒りの感情の表現方法や言葉にできない気持ちについて、ゆっくりと語りかけるように読み上げるスタッフの声に、子どもがじっくりと耳を傾けていた様子が、強く印象に残っています。最後に、身体の触れ合いを利用したペアリラクゼーションを行いました。その目的は、感情の高ぶりを静めることと、相手をねぎらう肯定的なメッセージを送り合うことであり、おだやかな気持ちでワークを終えることができたのではないかと思います。そして、今回は参加することができなかった他の仲間とのつながりを育んでいくことができるような言葉かけをし、次回の同窓会開催につなげるかたちで一連のプログラムを締めくくりました。
後半、午後2時から午後2時30分までの30分間は、茶話会の時間をもちました。お茶とお菓子を楽しみながら、ざっくばらんに会話を交わし合うことができるように、というのがその目的です。ゆっくりとした時間の流れの中では、お母さんが日常生活における不安を吐露される場面も見受けられ、子育て、仕事、家族関係など、様々な心配事をお持ちなのだということが、改めて痛感されました。これから、色々と大変な状況に見舞われることもあるかもしれませんが、せめてこの場が、何か不安なことがあった時に立ち戻ることのできる安心の基盤となればと、しみじみ思った次第です。ここで一緒に同じ時間を過ごした仲間同士、気持ちのうえでつながっていくことができるようにと期待をこめて、今後も定期的に同窓会を開催していきたいと考えております。
(ニュースレター第11号/2005年5月)