活動会員 安田裕子
10月下旬から12月上旬にかけて、シェルターを退所した母子を対象に、ステップハウスへのプログラム派遣を隔週全4回で実施した。プログラムは、既に実績のある全6回(毎週)の来談プログラムを全4回に改変したものである。来談プログラムでは、現在夫との関係において、とりあえずは安定した生活をし、暴力に曝される危険性がない(夫と離婚している、あるいは調停中など)母子を対象にしたが、今回対象とする母子は、必ずしもそうした安定した状態にはなく、6回連続での参加が難しいように思われたからだ。具体的には、安定しているとは言い難い生活環境であることを踏まえ、少なくとも、プログラム実施による弊害だけは回避するよう注意しつつ、アサーション(自己主張トレーニング)については軽く触れるにとどめ、ストレス対処と自己評価の向上に焦点化したプログラムにした。
参加を希望されたのは3組の母子(子どもは3人きょうだいを含めた5人)であった。来談プログラムと同様に、プログラム実施前の事前インタビューから実施した。なぜならば、参加される母子の暴力の被害状況や現状を把握しなければ、プログラムがかえってマイナスの影響を及ぼさないとも限らないからである。そして、このインタビューで聴き取った母子の様子をもとに、上記のようにプログラム内容を微調整していった。
こうして迎えたプログラム第1回目、ステップハウスの担当者2名を含めた総計12名のスタッフは、事前の打ち合わせを念入りにしたうえで、初の対面&プログラム実施にドキドキしつつも、お母さんと子ども達がやってくるのを楽しみにしていた。そんな時、参加予定のお母さんから、もう一方の母子が子どもの体調がすぐれないため参加することができないかもしれないとの連絡があった。その間、プログラム実施そのものを延期してもらえないだろうかという話がお母さん側から出されたが、我々としては、今回延期しても次回に必ず実施できるとも限らないことが懸念された。また、連絡をくださった母子はとりあえずこちらに向かっているとのことだったので、検討した結果、プログラムを予定通り実施することにした。結局、体調がすぐれないといわれていた母子も遅れて来られ、30分程開始時刻をずらしてプログラムを実施することができた。その後、その母子はプログラム2回目以降にお休みされることもあったが、少なくとも1組の母子が継続的に参加されるなか、全4回のプログラムをなんとか無事に終えることができた。ただ、もう1組の親子は結局1度も参加されることはなく、それが残念だったと思う。なお、このことは、DV被害を受けた母子の生活状況の不安定さを物語っているものと思われた。
今回、助けを必要としつつもなかなか支援が届きにくい人々を対象に、なにがしかの援助活動を展開すべくプログラムを実施してきた。このことを通じて、コミュニティでこうしたプログラムを実施することの意義を肌で感じることができ、また同時に、シェルターなどより緊急性の高い場に、プログラム派遣を行うことの重要性をも痛感した次第である。また、今後、子どもの発達段階に応じたプログラムを開発していく必要もあるだろう。課題は山積みだが、今自分のやっていることの役割や位置づけを確認しながら、できることをできる範囲でやっていきたいと思う。
(ニュースレター第14号/2006年2月)