活動会員 渡邉佳代
DV子どもプロジェクトでは、現在、登録してくださっているメンバーが総勢17名となり、ほぼ毎月行っているミーティングでは、毎回盛りだくさんの議題と報告で活性化しています!
ミーティングでは、シェルター・ステップハウスでの派遣プログラム実施に向けたデモンストレーション・プログラムや(後の安田の報告をご覧ください)、他のDV支援団体と連携した支援体制のあり方、方向性など(後のおだの報告をご覧ください)を検討・報告しました。
また今後の活動に向けて、活動会員の田中さんと岡本さんが、かわいいイラスト入りのDV子どもプロジェクト専用のパンフレットを作成してくださったり、同じく山田さんが助成金部門担当として活躍してくださったり・・・。なかには、演劇をされていた活動会員さんもいらっしゃるので、パペットを使った心理劇の指導をしてくださるなど、多彩なメンバーによって、DV子どもプロジェクトの活動が今後も展開していくのではないかと期待しています。
最後に、4月のミーティングでメンバーと共有した、昨年の派遣プログラム参加者の声をご紹介いたします。昨年のプログラムを実施したメンバーにとっても、実践未経験の新メンバーにとっても、参加者の声がどきどき、わくわく、じ~んと心に響いてエンパワーされ、今後もより良いプログラムを実施して多くの母子と出会い、つながっていきたいと感じました。感想を寄せてくださった参加者の吉沢さんに、この場をお借りしてお礼申し上げます。
★FLCの「母と子のサポートグループ」に参加して(2005年10月~12月)
やわらかく暖かい雰囲気の中で、毎回、ていねいに進められました。どんな事をするのかなぁと楽しみに参加しました。
私が良かった点は、①(母と子は別々の部屋でサポートを受けたのですが、)子どもがとても楽しそうに出てきた。②私は私のままでいいんだと再確認できた。③参加者同士が親密になれた。です。最後にクリスマスに、FLCから送ってきてくれた「星のカード」と手紙には、「自分を大切にね」というメッセージがいっぱいつまっていて、涙が出ました。事件から5年たっても、人とつながることに面倒くささを感じていた私ですが、これからは少しずつ、前向きに人とつながっていけそうな気がします。(吉沢 瞳)
派遣プログラムのデモンストレーションを実施して
活動会員 安田裕子
DV子どもプロジェクトでは、現在、ステップハウスやシェルターへの単発のプログラム派遣を検討しています。5月13日(土)、とあるDV支援団体に出向き、DV被害を受けた母子を支援している援助者の方々に、プログラム(母親向け)の内容紹介を目的としたデモンストレーションを行いました。プログラムは、この場に訪れる母子が、自由に参加を決めることができるようなものにしました。①自己紹介、②オリエンテーション、③ストレス反応に関する心理教育劇(パペットを用いた人形劇)、④アファメーション・ペアリラクセーション、という構成です。メインの心理劇では、DV家庭で育ち、様々な症状を呈しているお猿のモン吉くんと、モン吉くんにDVに関する様々な知識を伝える老賢者のミミズクさんが登場します。。DV目撃による症状の現れと、その対処法を学ぶことがその目的です。子どもに現れる症状を学ぶ設定のなかで、子どもへのDVによる影響を理解すると共に、母親自身が自分自身の症状やストレスマネジメントなどの対処法を学んでもらうことをねらいとしました。スタッフ内部で検討を重ね、母親自身が、被害の記憶に直面することを避けつつ、子どもへの理解を促すことができるような構成に仕上げました。
このデモンストレーションに対する評価の如何により、今後の派遣が実現されるかどうかが決まることになっていましたので、私たちは、気合いを入れて準備を進め、当日に備えました。また、心理劇担当の2名の活動会員は、今回初めて人前でプログラムをするという状況でもあり、随分緊張しているようでした。聞けば、この日のために、自宅で鏡に向かってパペットの動きを実際に確かめつつ声色を合わせながら、何度も何度も練習したということでした。そんな地道な努力が功を奏し、心理劇は大成功!身体の細やかな動きで感情をよく表現するモン吉くんと、どっしりかまえて心に響く示唆を与えるミミズクさんとのやりとりは絶妙で、フロアで劇を観ている人々を魅了しているようでした。心理劇の後にはペアになって動作法を用いたリラクセーションによるメッセージ交換を行い、心身を癒しつつクールダウンさせてプラグラムを終了しました。
今後は、7月に当DV支援団体への派遣プログラムを予定しています。そこここで行われている援助実践がつながり、網の目のようになって、コミュニティにおける支援が少しずつでも広がっていくことを期待しています。
●活動会員 細見真喜子(パペット,モン吉役)
今回、初めてDV子どもプロジェクトのデモンストレーションで、暴力の影響からくるストレス反応についての理解を深める心理教育のために、パペットを使った人形劇でお猿のモン吉役をしました。初めての人形劇で、パペットの動き、声の調子を練習しましたが、そこで一番大切にしたことは、自分がモン吉になりきるということでした。自分自身がモン吉の気持ちを理解して、それを伝えたいと思わなければ、到底見ている人には届かないだろうなと思いました。何度もモン吉の台詞を読んでいくうちに、その台詞が頭にこびりつき、はじめは字の上でしか理解しきれなかった暴力の影響からくるストレス反応というものの大変さを感じることになりました。同時に、このシナリオを作られた子プロの先輩メンバーの偉大さも感じました。モン吉を練習している中で、モン吉のような気持ちを抱いている人達がどこかにいるんだなと思い、それがストレスを受けた時の通常の反応なのだと知ることだけでも、随分ほっとできるのではないか、だから多くの人達にモン吉の人形劇を見てもらい、少しでも役に立ちたいなと思うようになりました。デモンストレーション当日は、初めてということもあって緊張もしましたが、それ以上にこの人形劇を多くの人に見てほしいという気持ちで劇が進みました。今回、劇ができたのは、子プロの先輩メンバーが温かく後で支えて下さったこと、そしてDV支援団体の方々も見守って下さったからだと思っています。そこからメンバーで活動すること、「つながり」の大切さを得ることができました。
●活動会員 山田進治(パペット、ミミズク役)
あの日、デモンストレーション・プログラムに行く途中から緊張していました。細見さんと私は、とにかくとても重大な役割をするのだ、と感じていました。私はなぜか直前まで、パペットによる劇を子どもの前でやると思い込んでいました。ところが実際は大人たちばかりで、緊張していたのがなおさら緊張してしまいました。「(大人の目から)評価される」と思ったからです。さらに、ミミズクさんは、動きはほとんど首を回すしかできないのですが、セリフが多い。ある程度まではセリフを覚えて、あまり下を向かないようにするべきなのでしょうが、それはなかなか難しいことでした。また、台本の字を読みにくい黄色で印刷してしまったので、台本に顔を近づけないと読めませんでした。ピンチ!と思いました。しかしやり始めると、モン吉役の細見さんもいい動きをしてくれたので、だんだんリズムができてきたように思いました。ちょっとセリフを間違いかけても、アドリブで乗り越えたりできました。台本にはない言葉を付け加えたりもしました。やっていて、なんだか楽しくなって来ていました。セリフを言いながら、時々ミミズクさんの首を回す。ほとんどの人が、初めてみるとこれに驚くのです(私もそうでした)。さらにミミズクさんには、首を一周回すという大技があるので、これをいつ使おうか?と考えながら楽しみにしてました。あちらの方も好印象を抱いてくださったようでした。一応成功した、と感じました。この劇をすることで、何だか自分が見ている人の役に立てるのではないかと思えるようになりました。実際にやる時はどうなるのでしょう?楽しみです。
DV支援団体を支える会 総会に参加して
活動会員 おだゆうこ
DV子どもプロジェクトより、派遣プログラムの実践やドロップイン事業において協力、連携してきたDV支援団体から総会での講演依頼を受けて、責任者である村本邦子が「DV家庭で育った母子への支援と今後の展望~子どもとお母さんのための安心とつながりを育むプログラム実践より」という演題で、意見交流をする機会がありましたので、ご報告いたします。
講演は2006年5月26日に行われました。講演の前にはピアノ伴奏による歌声を楽しむ時間も用意されており、学園の会員、スタッフ、その他一般公開にて集った人たち20~30名ほどの参加者とのあたたかい雰囲気での講演会となりました。
はじめに、当NPOの紹介、子どもとお母さんのための安心とつながりを育むプログラムの経緯、DVが子どもに与える影響などが説明されました。支援については、子ども達にはどんな苦難にあってもそれを生き抜く力(レジリエンス)が備わっていること、それらの力を引き出す支援が有効であること、またそうした希望を見出す援助には母親支援が必須であり、母子並行での支援の大切さについても話されました。
コミュニティの一員である私たちにできることとしては、DVと子どもについての意識を高め、子どもを問題解決のための重要な存在として位置付けて援助過程に積極的に参加できるようにすることであるとし、イギリスの調査研究よりDV当事者の子ども達からのメッセージが紹介されました。
最後に派遣プログラムでの実践例として、暴力やストレス反応についての大事なメッセージが集約されているパペット劇を紹介し、今後の支援の可能性、展望についてはフロアとのやり取りを通して深められました。
フロアからは、家庭の中、学校の中にある生々しい暴力を取り扱うことのできる一次予防の必要性(学校現場での実施など)、パペット劇の内容を絵本にして広く普及させていく案等の貴重な意見を頂きました。
その他、あらゆる傷付きを受けた母子に関わるスタッフ側の苦悩、援助者のセルフケアの必要性、プログラム支援の社会的認知の必要性につても意見交換がなされました。
本NPOのプロジェクトとDV支援団体とのつながりができ、その活動に賛同してくれる人たちや、今回の講演に参加し興味を持ってくれた方々がつながっていく。そうしてつながりの輪が広がってゆき、地域でのサポートがより豊かにきめ細やかになっていくことが、今後のDV母子支援の可能性であり、希望であると、総会に参加して感じました。パペットのモン吉役で参加してくれた活動会員の山田進治さんは、「期待通り新たな体験をできたと思います。何よりも嬉しかったのは、パペット劇を終えて、DV支援団体の方に『すごく優しい声をしている』と言われたこと。パペット劇をやる自信がつきました」と緊張しつつも楽しい体験だったと総会の感想を述べてくれました。
(ニュースレター第16号/2006年8月)