正会員 渡邉佳代
DV子どもプロジェクトでは、毎月1回の派遣プログラムを継続しているほか、実施協力してくださっているDV支援団体のイベントの中で、お試し版プログラムを行うなど、プログラムの新たな展開を試みてきました。
当初は、DV被害に遭い、ひとまず安全が確立されている小学生の子どもを対象に、単発のプログラムを行うことを想定していました。しかし、回復段階や被害体験も異なる乳幼児から思春期にかかった高学年の子どもたち、そして継続して参加してくださる親子から今日が初めての参加!という親子…などなど、継続してく中で、対象に幅のあるプログラムが求められてきています。
こうした状況を受けて、DV支援団体とも親子の情報共有やプログラムのフィードバックを行う時間を設けるなど、さらに連携を密にして、試行錯誤しながらプログラムを組み立てて実施してきました。派遣プログラムを約1年続けてきて感じるのが、やはり子どもたちの安全と安心を守れるプログラムであること、そして子どもたちも私たちスタッフも楽しめるプログラムであるということが、互いのエンパワメントになるなぁと実感しています。
4月のイベントでは段ボールの家づくりを行いました(詳細は後の小川さんの報告をご覧ください)。安全性の課題は残ったものの、自分たちの背丈より大きいダンボールに四苦八苦しながら、それぞれが協力して作り上げた家の中にこもって、おやつを楽しそうに食べている子どもたちの笑顔が印象的でした。
5月のイベントでは風船を使ったストレス・マネジメントとして、腹式呼吸法を行いました。ストレスに関する簡単な心理教育プログラムを行い、イライラ!ムカムカ!モヤモヤ!している時、どんなことをしている?と尋ねると、「コーヒーを飲むとホッとする!」「お風呂に入る!」など、子どもたちの力を感じました。その後、ホッとリラックスする「魔法の風船」を懸命に膨らませ、それぞれが風船に「ホッとした顔」「楽しそうな顔」「ゆったりした顔」を描いた後は、体いっぱい使って風船遊びをしました。(詳細は後の岩下さんの報告をご覧ください)。
また、DV子どもプロジェクトでは、現在、DV家庭の子どもに向けた心理教育パンフレットや、プログラム単発集の作成を行うプロジェクトを企画しています。今後、派遣プログラムを継続していくにあたって、私たちのスキルアップにもなり、支援の幅も広がっていくのではないかと楽しみにしています。
●活動会員 小川絵美
4月のプログラムは段ボールの家づくりでした。DV子プロのプログラムが始まるまでに、DV支援団体での保育が行われていたため、子どもたちはそれぞれに遊び、うち解け合っているようでした。今回いちばん反省している点は、カッターナイフを使ったことです。子どもが作業に夢中になったり興奮した場合に、刃先を出したまま走り回ったり、指示が全く通らず手元が危なかったりしたため、事故が起きる危険性が高く、気が気ではありませんでした。このことは、DV支援団体のボランティアさんたちにも不信感を招くことにもなりかねないので、プログラム提供に当たっては第一に安全性を重視することが大切であることを実感しました。
結果的には、実際に手を切ってしまった子どもがいましたが、そのときのDV子プロのチームプレーは連携がうまくとれてよかったと思います。けがをした女の子をしっかりと真正面から受け止めたスタッフ、他の子どもが心配しないように、他の子への視線を忘れずにそばで見守っていた他のスタッフたち、遠くからことの成り行きを知った私にとっては、安心とはどういうことかを体現している人たちに見えました。
これまでにもう半年以上にわたって、月に1回プログラムを提供してきたわけですが、子どもたちにはどれだけの安心を届けることができているのでしょうか。参加メンバーの中に固定メンバーができてきたことは1つの目安にすることができるかと思います。また半年実施してきて、いろいろなことがわかってきました。具体的には、子どもの年齢層が広いと少しプログラムに見合ってないと思われる子には特に注意を払う必要があること、実施場所によっては枠組みにとらわれすぎては目的から外れてしまうことなどがあげられます。さらに今後は、より「安心・安全」を重視しながら構成を考えていくことをはじめ、参加する子どもたちの特性やこれまでの報告とふりかえりを総合してプログラムを行う必要がでてきているのかもしれません。
●活動会員 岩下真子
5月のプログラムに参加しました。毎回プログラムのおわりに絵本の読みあいをしますが、今回子どもたちが選んだのは『せんたくかあちゃん』。私もこのお話大好きです。せんたく大好きなかあちゃんのところに、おへそをねらってやってきた鬼。「汚い鬼だねえ?」とかあちゃん、洗ってしまいます。すると顔がなくなっちゃった!そこで子どもたちにかわいい顔を描いてもらい、鬼は大喜び!次から次へと鬼が「ぼくもいい顔にして!」とやってくる…そんなお話です。
この日のプログラムでの子どもたちも、『せんたくかあちゃん』にでてくる子どもたちみたいでした。おなかをふくらませて息をする練習をしたあと、みんなで風船をいっしょうけんめいふくらませました。ひとつできると、次々に「まだほしい!」と挑戦。どんどん風船がふくらみます。大人でも難しい風船を、何度も挑戦して見事にふくらませた子もいました。その後、みんなで思い思いの顔を風船に描きました。にこにこ顔だったり、ほっこり顔だったり、うれしい顔だったり…。かわいい風船がたくさん部屋にあふれました。そして、自由に風船をとばしたり、ボールで遊んだり、あっという間にプログラムの時間がおわりました。
この日のお天気は、雨あがりでしたが、プログラムが終わるころには、お天気もだんだん良くなり、むしむし。たくさん体を動かして遊んだので、子どもも私も汗びっしょりでした。まさしく明日は洗たく日和。私も洗たくしよう。
みんながつくったほっこり顔やにっこり顔の風船が青空にふわふわ浮かんでいる様子を想像すると、なんだかふんわりした気持ちになりました。
(ニュースレター24号/2008年8月)