正会員 渡邉佳代
DV子プロでは、現在、前号のニュースレターでご報告した助成事業の小冊子作成の大詰めに入っています。小冊子を1冊作成するまでに、多くの人たちの時間と力が必要ですが、私たちが試行錯誤しながら経験し、積み重ねてきたつながりと知見が、情報を必要とされている方々のお役に少しでも立てるよう願っています。
この小冊子作成の1つに、どんな人でも手軽に、楽しくリラックスして行えるプログラム・アイデア集があります。私たちは毎月1回行う派遣プログラムで、大変な状況を生き抜いてきた子どもとお母さんたちに対して、気軽に参加できること、馴染みのあるツールを用いること、安心して楽しい時間を積み重ねていくこと、その中でピアサポート的に関わることを大切にしてきました。子どもとお母さんたちにとって、少しでも楽しくリラックスした時間になったら…と願い、毎回のプログラム内容を考えてきたことから、今回、プログラム・アイデア集の作成に取り組みました。
9月からの派遣プログラムでは、このプログラム・アイデア集の作成と並行して、子どもたちが手軽に楽しく遊べるおもちゃ作りを試験的に行い、改良を試みてきましたが、子どもたちには大好評でした!
9月には、子どもグループでは、レインスティックの作成と絵本の読みあいを行い、母親グループではフリートークとタッピング・タッチを行いました。10月には、子どもグループでは、なぞの円盤UFOとコップハープの作成、そして絵本の読みあいを行い(詳しくは、後の森?の報告をご覧ください)、母親グループでは、フリートークと呼吸法を行いました。11月には、かねてからお母さんたちの希望にあった親子合同でプログラムを開催し、親子でアロマ・ハンドマッサージを行いました。子どもたちは普段とは違う形式に初めは少し緊張していたようでしたが、リラックスしてくると、思い思いに親子の時間を過ごしていたようです。
12月は、派遣プログラムにご協力いただいているDV支援団体と合同でクリスマス会を行いました。DV子プロは子どもグループを担当し、パウダーアートとクリスマスカレンダーの作成を行いました(詳しくは、後の平井の報告をご覧ください)。クリスマスカレンダーは、色画用紙でクリスマスツリーを作って台紙に貼り、日にちの横にお菓子を貼り付けて、1日にひとつずつおやつを食べていくお楽しみカレンダーです。
これらのプログラムは手軽に楽しく取り組め、プログラム・アイデア集にも掲載予定です。私たちも子どもたちと一緒に楽しみ、たくさんの元気をもらったプログラムばかりです。出来上がりをお楽しみに!!
第6回『ボランティア・スタッフ養成講座』を実施しました!
毎年恒例のこの養成講座も、今年で6回目を迎えました。この講座は臨床心理学的な観点から、DV・虐待への介入や治療的アプローチを学び、コミュニティに根ざした援助者の養成を目指すもので、DV子プロの活動目的の1つである、一般社会や専門家集団への意識啓発に当たります。今年の参加者は14名と大盛況で、これまでの修了生は73名となりました。
講座は、プログラム・スタッフがDV子プロのこれまでの活動報告と、グループ・ロールプレイを交えてトラウマの転移・逆転移の理解を、理事長村本がトラウマを受けた子どもの理解と対応を、いくの学園のサポーターであり一時保護施設の心理カウンセラーをされている林久美子さんからは、DV被害を受けた母子の現状とシェルターでの取り組みを報告し、理論と実践を交えた盛りだくさんの内容でした。
最後のグループ・シェアでは、参加者それぞれがネットワークを作り、互いにエンパワーされている様子で、プログラム・スタッフもたくさんの元気をもらいました!
○●講座参加者の感想●○
*他の院生さんたちにも真っ先に紹介したく思います。学びのシャワーという感じです。内容はもちろんですが、プログラムが時間的にもきっちりと構造化されていて、充実しているところ、目的とされていることが明確なところがよかったです。(長屋絵里子)
*有意義な時間でした。2日間だけで本当に色んな気づきが得られ、頭と胸がいっぱいになっています。自分やクライエントの“関係性”について考え続けること、大切にしていきたいです。(My)
*DVやトラウマについて、理論から実際の事例まで聞かせていただき、大変勉強になりました。また、ロールプレイでは、自分を理解することの大切さを再確認することができました。(H・M)
*シェルターの実態が聞けてよかったです。子どもの特徴やどう関わっていくのか、いくべきかについて、具体例があり分かりやすかったです。(匿名)
*母子並行プログラムについて知ることができ、よかった。予防的な関わりとして素晴らしい活動だと思いました。若い学生さんたちの意欲を感じることもできて頼もしかった。あっという間の2日間でした。自分のやってきている仕事を客観的に見ることもできてよかったです。(M)
*日頃参加している子どもプログラムの活動を振り返ることができてよかったです。自己理解について、具体的なポイントを教えていただき、とても勉強になりました。今後の活動にも活かしていきたいと思いました。(福田央子)
「子どもの変化に感動!」
正会員 森﨑和代
2008年10月26日(日)、私は、あるDV支援団体で継続して行っている子どもプログラムにファシリテーターとして参加し、6人の子どもたちと3人のスタッフで楽しいひとときを過ごしました。
今回、参加した子どもたちは初対面の子も多かったようで、最初の名札作りと自己紹介では、スタッフが話しかけても身動きひとつしない子、名前以外は硬く口を閉ざす子、うっすら涙を浮かべる子などもいて、なかなか緊張の糸がほどけない様子でした。3人のスタッフは、その気持ちに寄り添いつつ、子ども自身の参加の仕方を尊重し見守りました。
今回のハイライトは、「なぞの円盤UFO」と「コップハープ」のおもちゃ作りです。ほとんどの子どもたちが時間を忘れて2つのおもちゃ作りを楽しみ、最初緊張していた子たちも、次第に製作に熱中する姿が見られました。
そして最後は、絵本「おやすみフランシス」の読みあいです。この絵本には随所にお父さんの存在が出てきますが、ふと気づくと、食い入るように絵本に近づいて見聞きしている子もいて、子どもたちは読みあいに参加したりしなかったりと、各場面で参加の仕方を自分で決めている様子でした。
最後少し時間が残り、おもちゃで遊び足りなかった子が遊びを考案し遊び始めました。プログラムを閉じる頃には、どの子もみんな満面の笑みで夢中になってゲームに参加し、楽しんでいました。プログラムの進行と共に見られた子どもたちの変化は、とても感動的でした!
「自己表現力を高めるプログラム開発に向けて」
活動会員 平井郁子
今回クリスマス会で子どもグループのファシリテーターとして携わらせていただく中で、1人ひとりの中にある潜在能力をいかに引き出すかという点について、個々に興味を示してもらうプログラムへの導入過程が重要であると実感しました。
パウダーアートを採用し簡単に表現できるツールとして効果が見られたように思う反面、描くことに慣れていない子どもにとっては扱いにくい様子が伺え、スタッフによる模試的誘導への関わりが不可欠となりました。全体の表現力は柔らかいパステルカラーに合わせて比較的明るい表現が多く、穏やかで創造的な空間が体験できたように感じます。
また、引き続き持続が厳しくなる時間帯にタイミング良くお菓子を施したクリスマスカレンダーの作成に入ると、一気に子どもたちの興味が注がれ心弾ませながら取り組む様子が伺えました。こうした子どもが本来持つ無邪気な一面を守られた環境の中で多く引き出す機会こそが大切な支援の1つと実感します。短いプログラム実施時間の中で、子ども自身が自己評価を高める場として提供できるかが単発プログラムの有効性を問われる重要な視点と感じました。
(ニュースレター26号/2009年2月)