正会員 渡邉佳代
新年度に入り、DV子どもプロジェクトでは、昨年度にボランティア・スタッフ養成講座を受講し、登録された新メンバーがファシリテーターやコファシリテーターのデビューを果たしたり、立命館大学大学院から実習生さんを6名迎えたことなどから、プログラム・マニュアルを作成しました。
これまでにも、新メンバーを迎える際に、ボランティア心得を読み合わせ、役割分担や時間枠などのルールについて確認してきました。今回作成したマニュアルは、プログラムの目的を明確にし、プログラムを実施する中でスタッフが戸惑うことの多かった子ども対応の留意点をまとめました。
これまでもご報告してきたとおり、DV子プロで行っている派遣プログラムは、スクリーニングが不可能であり、半構造化のオープン・グループであること、被害状況や回復状態、年齢も様々な子どもが参加します。参加人数も当日にならないと分からないため、構造化しにくく、関係性の持ち方も様々です。そのため、毎回、スタッフのほうで柔軟な対応とプログラムのあり方が求められます。
こうした状況で、私たちDV子プロが共通に持っている目的は、子どものレジリエンスを引き出せるよう、子どもが安全に安心して楽しめる場であること、スタッフは1対1の関係性だけではなく、チームとして子どもに対応する視点を持つことです。子どもも大人も楽しめるよう、一緒にプログラムを作っていくというグループの視点も加えながら参加することが求められます。
グループのあり方で疑問に思うことがあれば、そのつど、ファシリテーターやコファシリテーターに対応や役割の確認をすることや、プログラム後には事後ミーティングの中で、それぞれの関わりについてシェアリングすること、子どもの安全面への配慮について、まとめられました。
例えば、プログラムでは子どもの暴力や暴言、危険な行動が見られることもあります。DV家庭に育った子どもにとって、それらの言動には、色々な背景や意味合いがあると考えられます。大人への試し行動であったり、一種の愛情表現のようなものであったり、自分は強い・負けないというような表現であったり・・・。ある意味、プログラムが継続される中で、安心して参加でき、不安を表現できる関係性ができてきたとも言えます。
しかし、暴力のある家庭に育った子にとって、暴力のない人間関係を経験することは殊のほか重要です。自傷他害に関わらず、暴力や暴言はその意味を受け止めつつ、毅然と対処することが求められます。時には、子どもを抱きしめる、子どもの両手をにぎるなど体を張って暴力を止めることが必要な場合もあります。暴力を止め、子どもが落ち着いてから、何が起こったのか、どんな気持ちなのかを言葉に置き換えて表現し、「じゃぁ、どうしたらいいかな?」と、問題解決をともに考える対応が大切です。子どももスタッフも安全に安心して参加できるよう、これからもプログラムの展開に合わせて、マニュアルを見直していく予定です。
4~6月の派遣プログラム活動報告
4~6月のプログラムでは、前号にご紹介したプログラム・アイデア集が大活躍!でした。特に、体を使った遊びは、子どもたちに大好評でした。
4月には、子どもグループでは、ペアで「鏡になろう」やヨガなどの体遊びを行いました。今回初めて参加した子どももいましたが、体を使った遊びをとても楽しみに来てくれたようです。プログラムの前には、部屋の隅で小さくなっていた子が、プログラムを通して、体を伸び伸び動かし、次第に笑顔も多く見られるようになりました。子どもたちは体を精一杯動かして楽しみ、そのうち、子どものリクエストからリレーが始まりました。参加せず、見ている子どもも、リレーをしている子どもやスタッフの傍まで寄り、走ってくる時の風を体に浴びて、楽しんでいたようです。それぞれなりの参加の仕方で、メンバーとの一体感を味わったプログラムでした。母親グループでは、フリートークと動作法を行いました。動作法では、「前は体に力が入って、肩上げが全然できなかった。言っている意味も分からなかったけど、今日は思ったよりできたので、嬉しい!」「体のバランスの悪さに気づいた。大事にしなくちゃね」などの感想が寄せられました。
『子どもたちのレジリエンスを引き出すプログラム・アイデア集』より、「鏡になろう」
5月は、派遣プログラムにご協力くださっているDV支援団体のイベントの中で、子どもグループを担当しました。プログラムでは、大人がすっぽり隠れるほどの大きなシーツと体を使ったクイズ遊び「ジャジャ~ン!」と、パウダーアートを行いました。今回は、継続している馴染みの子どもが多く参加してくれました。クイズ遊びでは、子どもたちの観察力と、ユーモアいっぱいの知恵と工夫に驚きました。パウダーアートでは、手のひらを真っ黒にして、画用紙にアーティステックな(!)作品を仕上げ、作品紹介では、少し恥ずかしがりながらも、堂々と紹介していた子どもたちが印象的でした。プログラム終了後の自由遊びでは、子どもが持ってきたなわとびをつないで大縄をしました。小さい子も入れるよう、大きな子どもが縄の回し方を工夫したり、声をかけたりして、ほっこり心があたたかくなったひとときでした。
6月には、子どもグループでは、牛乳パックとビニール袋を使った、カズー作りを行いました。今回は、初めて参加した男の子が多かったです。思い思いに作ったカズーで、カエルの歌を合唱(奏)したり、輪唱(奏)したり、体一杯に走り回り、梅雨を吹き飛ばすかのような、子どものパワーが印象的でした。母親グループでは、フリートークとタッピング・タッチを行いました。日頃、お子さんのことで気になること、不安なことをゆっくり話し合い、タッピング・タッチでは、「体がふわっと軽くなった」「人の手って、こんなに温かいんですね」など、感想が寄せられました。
カズーは、元はアフリカの楽器で、口にくわえてハミングするものです。 声の振動により、膜(今回はレジ袋を代用)をビリビリと震わせた音を楽しみます。
『子どもたちのレジリエンスを引き出すプログラム・アイデア集』より
これから、ますます暑~い夏を迎えますが、次はどんなプログラムにしようか?季節に合わせたプログラムもいいな…そんなことを考えながら、また子どもたち、お母さんたちにお会いするのを楽しみにしています。
(ニュースレター28号/2009年8月)