正会員 渡邉佳代
DV子どもプロジェクトでは、昨年12月のボランティア・スタッフ養成講座を受講し、スタッフ登録希望をしてくださった新メンバーの3名を迎え、1月に恒例のスタッフ・オリエンテーションを行いました。オリエンテーションには、新メンバーのうち2名と、実習生2名、スタッフ4名の計8名が参加し、それぞれが自己紹介をして、ボランティア心得の読み合わせと、プログラム実施マニュアルの確認を行いました。
オリエンテーションの様子
オリエンテーションの後半には、単発プログラムの新規ご依頼をいただいた、DV支援施設の職員さんを迎え、打ち合わせを行いました。親子にそれぞれストレス・マネジメントを楽しんで学べるようなプログラムを実施してほしいという、職員さんの希望から、体を動かして発散するプログラムと、クールダウンしてホッとするリラクセーション・プログラムを実施することが決定!
2月いっぱいは、スタッフそれぞれが、メールでプログラム企画を持ち寄り、プログラム・アイデア集の第2弾ができるかも?というほど、たくさんのアイデアが集まりました。今回は、初めての場所で、初めて出会う親子たち、そして単発でのプログラム実施のため、様々な可能性を考慮して、参加親子やスタッフが、安心・安全に楽しめるプログラムをメンバーや職員さんとともに吟味しました。
ドキドキ、ワクワク…期待と不安が交差しながら、3月に2日間連続でプログラムを実施しました。1日目は、子ども6名(乳児~小学校中学年)、おとな4名の参加。子どもグループでは、「ホッとするのは、どんなとき?」と、普段のコーピング(ストレス対処法)を尋ねながら、ストレス・マネジメントを学ぶ心理教育的アプローチを行い、風船を用いた呼吸法を実施しました。子どもたちが、それぞれ風船に思い思いの「ホッとしたときの顔」を描き、大切そうにその風船を持ち帰った姿が印象的でした。おとなグループでは、アロマ・ハンドマッサージをしながら、ゆったりとした時間を過ごし、参加者からは「今日はよく眠れそう」「手があったかい」と、感想が寄せられました。
2日目は、子ども11名(乳児~小学校高学年)、おとな8名という、参加者数が初日の倍になりました。おとなグループに尋ねると、初日のプログラムが口コミで広がったそうで(!)、参加された皆さんがとても楽しみにしてくださっていたことを感じました。子どもグループでは、体を使った遊びとして、新聞紙を破って丸め、的に当てる「新聞ポイポイ」と、にょろにょろと腹ばいになって楽しむ「にょろにょろ鬼ごっこ」を行いました。合間に、初日に覚えた呼吸法も取り入れ、子どもたちは、めいっぱい楽しんでいた様子でした。
おとなグループでは、体の困りごとを尋ねながら、ペアで楽しむ体ほぐしとして、タッピング・タッチをメインに、呼吸法や肩上げ(臨床動作法)、手のひらの温かさを肩で感じ合うペア・リラクセーションを行いました。「肩のあたりが軽くなった」「とても簡単な方法なので、帰ってから親子で試してみたい」「ペアの人の手の温かさが残っている」などの感想が寄せられ、人と人がつながり合う、ピア・サポートの力に感動しました。
今回は、ゼロからのプログラム企画に関わらせていただき、これまでのスタッフを初め、新メンバーからも「皆でプログラムを行っているという一体感が持てた」「助けてくれる存在がいることは、とても心強いと感じた」「子プロはスタッフ同士の仲が良く、ともに成長し合っていることを感じる」と、それぞれのつながりと成長を感じられたようです。プログラム実施の際に、親子が「安心・安全・つながり」を感じられるように配慮することはもちろんのこと、スタッフ同士でも同様に大切にほしいとメッセージを伝え続けてきましたが、改めて「大切な仲間」とのつながりに感謝の気持ちでいっぱいになりました。
最後に、普段の業務からもご多忙な中、プログラム企画を取り入れてくださり、当日にもご参加くださったDV支援施設の職員の皆さまに、心より感謝します。
DV支援施設の職員さんより、プログラムへの感想を
お寄せいただきました
常々、DV被害者の方に伝えているのは「これからは1人で頑張らなくていいからね」ということ。でも現実は・・・。当施設も「お母さん、ゆっくりしてね」「まずは休んでくださいね」と言いつつ、マンパワーの不足のため「子どもさんの見守りはお母さんがしてね」。ゆっくりできるシステムがない!子どもはDVの緊張から解き放たれて元気いっぱい!暴力の影響もありトラブル続出!さらに、頑張ってきた人はリラックスすることも苦手。そんな中で、母子プログラムの派遣をお願いしました。
当日、母親と子どもと分かれてのプログラム。お母さんたちは安心して子どもと離れる時間を持て、普段、職員に見せる顔とは違い、リラックスされている様子。特に何があったか語らなくても「お互い、頑張ってきたよね」とあたたかい雰囲気に包まれました。シェルターでの生活は、安全ではありますが、閉塞感が伴う場合があります。また、先のことを考えるのは希望もありますが不安もいっぱいです。次から次へとしなければならないことも出てきます。案外、ホッとできるのは最初の一時期かもしれません。そんな中、非日常の時間、自分に目を向けることのできる時間はとても貴重です。『派遣』だからこそ作れる時間だと思います。
子どもたちも1日目はちょっと緊張していたようですが、2日目からはいつも通りにヤンチャして、お兄さん、お姉さんに目いっぱい遊んでもらって満足したようです。
今回は職員も一緒に楽しませていただきました。セルフケアが大事だよ!と言いながら、ケアが苦手なのは職員も同じかも。施設としても、新たなつながりができて嬉しく思っています。これからも続けていけると私たちも力づけられます。
(ニュースレター31号/2010年5月)