正会員 渡邉佳代
DV子プロでは10,12月をいつもの継続団体で、そして11月は単発プログラムとしてDV支援施設で派遣プログラムを行いました。プログラムの内容は、以下の表の通りです。
11月に単発プログラムを行ったDV支援施設では、2010年3月から派遣プログラムをスタートし、今回で5回目の実施でした。「幼児から小学生までの子どもが、遊びの中でストレス・マネジメントを学べるようなプログラムを」という施設からのご依頼で、風船を使った呼吸法や体を動かして気持ちをすっきりするプログラムを毎回取り入れています。
今回は施設に入所中の親子5組(子ども9名)の参加で、初めは少し緊張気味の子どもたちが、プログラムの中で次第に体をいっぱいに使って遊び、伸び伸びと楽しむ姿が印象的でした。プログラムが終わると、アロマ・ハンドマッサージでほっこりしたお母さんたちの笑顔と、子どもたちが嬉しそうに風船を見せている姿に、スタッフもほっこり笑顔でした!施設職員さんより、プログラムの感想を寄せていただきましたので、以下にご紹介いたします。
●母子プログラムの感想●
派遣で来ていただいて、延べ5回。毎回、子ども達はたくさんの人に関わってもらって満足げ。お母さん達もゆったりした時間が持てることで素敵な笑顔になります。こういう時間が増えるといいな・・・。
そして12月は、 継続団体で毎年恒例のクリスマス会! 継続団体と連携し、子プロは子どもグループを担当しました。クリスマス会は毎月継続して参加される親子に加え、遠方からも年に1回のイベントを楽しみに参加される親子もいます。「今年も会えたね!○○ちゃん、大きくなったね~」などの声が飛び交います。いつものプログラムより多い12名の子どもたちの参加に、スタッフも14名そろってプログラムを楽しみました。
今回は、毎年クリスマス会で人気のプログラム「クリスマスカレンダー」をご紹介しますね。クリスマスまで毎日1つずつのお菓子を食べながら、クリスマスの雰囲気を楽しむアドベントカレンダー作りに、子どもたちも大喜びでした。
クリスマスカレンダー
■ねらい : カレンダーを作成し、1日1個のおやつを食べながら、毎日の経過を確かめる。
■所要時間 : 60分
■準備物 : 台紙となる画用紙、色画用紙(緑、茶、黄)、折り紙、キャンディなど包装した小さなお菓子、綿、カラーモール、はさみ、のり、マジック、セロハンテープ
■方 法:
① 緑の画用紙をツリー型に切って、台紙にする画用紙に貼る。茶色の画用紙はツリーの幹に、黄色の画用紙はツリーに飾る星型に切って貼る。
② 折り紙やマジック、綿、カラーモールで飾り付ける。
③ お菓子を25個、テープで貼り付けて、その横に1~25の数字を書く。一番好きなお菓子は、25日に。
※DV子どもプロジェクト『子どもたちのレジリエンスを引き出すプログラム・アイデア集』より参考、引用
クリスマスカレンダーができあがった後は、絵本作家でもある村中李衣さんをお招きして、絵本の読みあいを行いました。村中さんには、2007年4月にも子プロ研修の一環として、絵本の読みあいワークショップをしていただいたことがあります。この時は、同年8月からスタートした、毎月の派遣プログラムの実施に向けた研修でしたが、現在でもプログラムの終わりには必ず絵本を読み、子どもたちと物語の世界とたくさんの気持ちを共有して、プログラムを終えています。
今回もリズムに乗った語り口調や、子どもたちの様子をも読みあいに取り入れる村中さんの素晴らしい絵本の世界に、子どもたちだけでなくスタッフも皆、引き込まれてしまったようです。絵本の読みあいについては、村中李衣さんの『絵本の読みあいからみえてくるもの』(ぶどう社)と、以下の参加スタッフの報告をご覧ください。
李衣さんの読み合いが始まると、それまでワイワイ賑やかだった場が、一気にシーンとなった。そして皆の視線が絵本に集中する。一冊目は『ねこガム』(福音館書店)。「くっちゃくっちゃ・・」「ぷぅ~」「ぷぅ~」とリズミカルな声と表情の李衣さんは、まるで絵本から飛び出てきたようで、私達を引きこむ。「えっ、何だろう?」大人も子どもと一緒に息を呑む。大きく膨らんだフーセンガムはネコの顔。そしてフーセンガムが男の子を吸いこんでしまう!そんな奇想天外な展開に子ども達も「何が起こったのか?」とびっくり。そして最後は割れたフーセンガムが男の子の顔について、泣きべそに。李衣さんの脱力した声と一緒に、子ども達も「はぁ~」と一気に脱力。
二冊目は『てじな』(福音館書店)。李衣さんは初めて大阪にやってきた手品師に変身。手品師の李衣さんが教えてくれた呪文「あんどら、いんどら、あらまんどら~」を皆で一緒に唱え、ページをめくると「あっ!」と驚く仕掛けが。読み合いが始まった最初、後ろのほうでそっと見ていた子もだんだん前に移動している。いったいどんな仕掛けがでてくるの?と、思わず立ち上がってしまう子も出てくる。
三冊目は子ども達も参加。「さあ、どっち」の掛け声に子どもが一人ずつ、右か左かページを選ぶ。絵が描いてあると当たり! はずれ!のときは、次の人に託していくのだが、そんな中で横のつながりもできていく。
最後は李衣さんが「にんじんとごぼうとだいこん」(日本民話)のお話をして下さった。そこは一つの舞台。お芝居を見ているようにその世界に引き込まれていった。李衣さんが、にんじん?に見えるから不思議だ。読み合いの世界で子どもも大人も一緒にワクワク、ドキドキ、ハラハラ、やったーとさまざまな気持ちを共有した。大人も童心にかえった。読み合いの後、子どもが満面の笑みで話しかけてきてくれたのが印象的だった。私も場の一体感で心も身体もゆるゆるとあったかかった。(理事・西)
新年を迎えて、今年も子プロの新メンバーを迎えました。継続団体のプログラムがスタートして3年半が経ち、DV支援団体での単発プログラムも継続していく予定です。安心して人とつながり、表現する場においては、参加する親子やスタッフがともに楽しみ、生きていく力を少しずつ蓄えていくことを継続していく中で実感しています。新メンバーともこうした時間を大切にし、安心とつながり、表現の輪が広がっていったらいいなと願っています。
第8回「ボランティア・スタッフ養成講座」を開催しました!
2003年より本講座を実施してきて、今年で8回目を迎えました。今年は10名の方々が参加され、これまでの修了生は92名となりました。皆さん熱心にご参加くださり、私たちの活動に関心を寄せてくれる存在に励まされました!
この講座は、臨床心理学的な観点からDV・虐待への介入や治療的アプローチを学び、本プログラムのスタッフ養成を目的としていますが、子プロの活動目的の1つである「地域でのDV・虐待の意識啓発活動」としても継続しています。加えて、地域でこれから支援を展開しようとしている、あるいは実践されている方々が互いにつながり合い、エンパワメントされる場でありたいと考えています。
昨年5月より、プログラム・スタッフとして参加している立命館大学の実習生さんたちにも、今回は運営スタッフとして、休み時間やお昼休みに受講者の皆さんの緊張をほぐしていただいたり、積極的につながり合うきっかけを作っていただいたりして、しっかりとスタッフとしての役割を果たしていただきました。
さすが子プロでの活動をこれまでに経験されているので、スタッフでのチームプレイのあり方や、場や雰囲気を作っていく力を蓄えられてきたことを感じて、嬉しくなりました。そのおかげもあり、受講者の皆さんは2日間の講座を終え、とても良い表情でお帰りになられたことが印象的でした。きっと受講者の皆さんは、これから地域でより良い支援を展開されていくことでしょう。
講座では、私たちスタッフもこれまでの活動を振り返り、活動の意義を確認する機会にもなりました。村本理事長の講義では、「私たちができる小さなことを1つひとつ積み重ねていくことが大きな力になること。そして、誰かのほんのささやかな一言やあたたかい関わりが、その人のあり方を支え続けていくということ」を再確認しました。今後の子プロでも、プログラムに参加される親子やスタッフ同士で、そうした関係性を育んでいけたらいいなと思っています。以下に、受講者の感想をご紹介いたします。
■受講者の感想■
◆この講座で知識だけでなく、支援者としての土台、柱の部分まで教えていただいた。特に自分が、自分の中の柱がさだまらず考えていた時期で、様々な話から自分もエンパワメントされた。明日から職場で生かしたいと思います。とても丁寧に1つずつかみ砕いて教えてもらえたこと。質問や疑問もくんでもらえる場であり、満足できた。(もりた)
◆非常に勉強になりました。トラウマ臨床に限らず、今後心理臨床家を目指すうえで心に留めておきたいと思う言葉をたくさんいただきました。DV被害やトラウマなど基本的な概念をふまえた上での事例紹介や現場でのご経験等お話しいただけたことで、理解がスムーズにできたように思います。(匿名)
◆DV家庭に育つ子どもと母がおかれている状況や支援の方法を学ぶだけではなく、トラウマ全体について考える機会になって、とてもよかった。社会の中にあるトラウマ(暴力の影響)の深刻な影響を理解してみても、希望を見失わないでとりくんでいくこと。そのためには、つながりが大切なことを実感をもって再認識しました。自分自身を相対化してみれて、エンパワメントと癒しになる時間だったなと思います。基本的知識を学ぶだけでなく、信頼とエンパワメントを感じれて、またがんばっていこうと思えました。(junchan)
◆学ぶことが、とても多かったと思う。様々な視点からの話をきけたし、知識の確認ができた。現場にいる方(林さん)、子どもプロジェクトの方、村本先生の臨場感あふれる話が面白かったし、参考になった。(実習生)
◆DVだけでなく虐待やトラウマ、転移・逆転移について学ぶことができてよかったです。また、シェルターでの実情も知ることができてよかったです。実際にロールプレイをして、自分の反応やダメだったところ、また、まわりの方のやり方をみてとても勉強になりました。支援をするにあたり、知ることができてよかったです。(さきちゃん)
◆DVや虐待について、学ぶことが出来た。特に現場のお話や事例などは、大変参考になった。林先生や村本先生のお話を聞くことが出来、実際に臨床の場で起こることについて、具体的にイメージすることが出来た。(実習生)
◆大変こい内容で、勉強になった。DVという問題に人間存在そのものを考えさせられるような様々なテーマがあったということに気づきました。DVの現場で何がおこっていて、何が必要とされているのか生の声がきけたことは大変力になったと思う。(波詩(なみうた)ちゃん)
(ニュースレター34号/2011年2月)