2012年1~3月の活動報告
理事 渡邉佳代
DV子どもプロジェクトでは、12月の養成講座で7名の新メンバー(うち、2名は立命館大学の実習生)を迎え、新たなチームでプログラムを実施しています。1月のプログラムの前には、毎年恒例のスタッフ・オリエンテーションを行い、スタッフの顔合わせとプログラム・マニュアルやボランティア心得の確認を行いました。
子プロで大切にしてきたチームプレイと、親子にとって安心・安全な温かいプログラム作り、スタッフも親子とともにプログラムを楽しむことが、新メンバーとともに共有できたらいいなと願っています!
そして毎年1~3月は、継続団体とDV支援施設でのプログラムが目白押し! プログラムの内容と参加者数は、以下の表の通りです。
オリエンテーションの様子
前回のニューズレターでもご紹介しましたが、プログラム企画の段階でファシリテーターとコファシリテーター、そして企画バックスタッフが協力して、プログラムの課題分析表を作成し、それを事前にメンバーと共有して毎回のプログラムに臨んでいます。例えば、『魔法の風船』ではプログラムの狙いを「風船を使って楽しみながら呼吸法を行い、ストレス・マネジメントのひとつとして覚える」としていますが、この目的を達成するために、どのような課題があるかを事前に分析し、各スタッフがそれぞれの役割のもと、どのように対応できるかを考えていきます。
プログラム終了後は、各スタッフがプログラムの記録を行い、その中で目的に沿って、各自がどのように親子と関わったかをメンバー全員でシェアします。手間と時間がかかりますが、回を重ねるごとにチームの団結力も、1人ひとりのスタッフが自分の頭で考えて積極的に親子に関わっていく力も、少しずつ身についてきたように感じます。
また、これまでの子プロでは、子ども同士のトラブルや暴言・暴力があった時に、スタッフがどう介入するかという課題がありましたが、これも課題分析を通して事前にイメージして手立てを考えたり、スタッフ同士でフォローし合ったりする場面も見られるようになりました。先輩スタッフ-後輩スタッフで助け合ったり、スタッフ自身が安心してプログラムに参加できることが、親子にとっての安心・安全の「守りの枠」になっているように思います。
DV支援施設での派遣プログラムでは、施設の職員さんも一緒に参加します。プログラムが終わった後のシェアリングでは、職員さんから「子プロは親子への見方・眼差しが温かいね」「私たちもプログラムを楽しめて、元気が出ました!」「普段見たことのない子どもやお母さんたちの表情が見られた!」など、嬉しいお声をいただきました。参加する親子や職員さん、そして私たちスタッフも互いにエンパワーし合えるような温かいプログラムを、これからも目指していきたいと思っています。
今回は子プロの新メンバーの3名に、活動を通して感じたことを寄せていただきました。以下にご紹介します。
★活動会員 土井裕貴
子プロでは、子どもたちが生き生きとしている印象があります。それは子プロの目的の大前提に安全に、安心して、自分って大事だという感覚を持ってもらうということがあるからだと思います。子プロの中では心理教育的な声掛けやストレス・マネジメントもプログラムの中に組み込まれていますが、それらをただ伝えるだけでなく、遊びながら楽しんでそれらを自分のものにできたことが子どもたちにこの先ずっと残っていくものになると思います。心から自由に遊べる場は多くはないかもしれないと思うので、子どもたちがまた来たいと感じ、この活動が子どもたちの心の成長のほんの、ひとかけらの栄養にでもなればいいなと願っています。
また、チームで何かを行うということは1人では味わえないような達成感、やりがい、おもしろさがあるなぁと思います。決して1人ではできないことも仲間と集まればできるし、しんどいことや悩んでいることも、投げかければ皆さんが真摯になって考え、受け止め、それぞれのお答えを出していただけます。その中で自分自身も安全、安心してプログラムにかかわっていくことが出来ているなぁと改めて実感しています。この感覚を子どもたちに伝えていきたいなと思います。
★活動会員 田丸加奈恵
今年度から子プロに参加して、子どもたちに安心感を与えることは具体的にどのようなことだろう。と考えるきっかけになった1年でした。安心感を与えようと言葉だけで子どもたちに伝わることはなく、話す時に目線を合わせるといった行動も子どもたちに安心感を与えるポイントだと感じました。DV家庭に育った子どもたちは、誰かに触れられることを恐れている状況にあるのかなと考えていましたが、活動をしていると暴力的でない温かな触れ合いを求めているのではないのかと感じる場面が多くありました。しかし、子どもの身体を触る時などでは子どもへの確認は忘れてはいけないことです。
このような環境で、私自身に「温かいふれあい」とは何かを考えていく課題が出てきました。そこで、プログラムで恥ずかしそうに話している子の手を握ってあげたり、お約束を破りそうになった子がいたら両手を握って諭したりしてみました。近くに寄り添って存在することも大切ですが、手を握るという行動は、相手をもっと身近に感じ温かい気持ちになった感覚を得ました。子プロの活動を通して、本当の意味で相手に寄り添うことの意味を再度、見つめなおすことが出来ました。
★活動会員 岡 智子
参加前に配布される入念に準備された企画に驚愕し、子どもたちが楽しみにするプログラムでは役割分担があり、迷うことなく参加できた。
温かい雰囲気の中、ありのままに表現、時には甘えも出し安心の時間を過ごす色んな年齢の子ども達。彼らのレジリエンスを引き出す自己効力感、自己統制、社会的スキル、楽しくストレス・マネジメントも学べる遊びプログラム。問題行動のとき、スタッフは子どもと向き合い、共感し正すよう対処する。これらはきっと母子支援、子どもの二次予防へと繋がるのではと思う。
毎回、試行錯誤しての参加ですが、専門性、人間性共に質の高い先輩チームメンバーにいつでも相談、チームの多くの視点を吸収できる恵まれた環境の下、エンパワメントさせてもらっている。参加毎に得られる多くの気づきを大切に積み重ねていきたい。
(ニュースレター39号/2012年5月)