2012年4~6月の活動報告
理事 渡邉佳代
新年度に入り、DV子どもプロジェクトでは立命館大学から新たに3名の実習生を迎えました。新しいメンバーとともに、継続団体とDV支援施設の2ヶ所に毎月交互に出向いて、派遣プログラムを行っています。昨年度に引き続き、今年度も継続団体では子どもプログラムを担当し、DV支援施設では母子並行プログラムを実施していく予定です。プログラムの内容は、以下の表の通りです。
先日、ある研修会で宮城県の被災地支援を行う阿部昇さん(京都市スクールカウンセラー、ひょうごHEART派遣臨床心理士)のお話を聞く機会がありました。宮城県は阿部さんの故郷であり、その場で出会った人を大切にしながら支援の場を広げていく過程を伺い、胸が熱くなりました。子どもたちの支援をどうしていくのかに戸惑う教員たちと、一緒に何かをする仲間として、子どもたちとその場に心を寄せる努力をされてきたとのこと。
大規模災害後の被災者のストレスとして、①恐怖・ショックによるストレス、②喪失によるストレス、③生活環境の変化によるストレス、④「生き方」の再構築に伴うストレス(職業など、今までと異なる能力を求められることによる)が指摘されています。早い段階で安心と絆があれば、その後の回復プロセスが異なると阿部さんは強調されていました。
阿部さんは現在も、被災地での遊びプログラムを通して、コミュニティに人と人をつなぐ場作りをされています。いくつかのプログラムを紹介していただきましたが、全身を使ったジャンケンや挨拶リレー、私たちもおなじみのタッピング・タッチやペアリラクセーションなど、どれもワクワクするようなものばかり!遊びを通してリラクセーションを身につけたり、コミュニケーションを図ったり、子どもたちと楽しむ工夫がいっぱいでした。
阿部さんのお話を聞きながら、私は子プロでの派遣プログラムを重ね合わせていました。DVシェルターで出会う親子たち、職員さんたち、そして子プロの仲間たち。出会った1人ひとりを大切にして、安心とつながりを作り合っていけたらいいなと思いました。
これまでに私たちも様々なプログラムを試行錯誤してきましたが、なかでも「魔法の風船(風船を使った呼吸法)」は、年齢を問わずに人気のプログラムです。目的は、遊びを通して、楽しみながらリラクセーションを体験すること。今回は、プログラム・アイデア集から「魔法の風船」を紹介します。
色んな「ホッとした顔」が描かれます
ホッとリラックス!魔法の風船
■ねらい:腹式呼吸を学び、リラックスに役立てる。
■所要時間:40~60分
■準備物:風船、油性マジック
■方 法:
①導入:皆がホッとするのは、どんなとき?
「今日は皆でどんなときにホッとするか、一緒に考えてみよう」
子どもたちに普段のストレス・コーピングを尋ねる。もし、出なければ、ファシリテーターが「お風呂に入ったときに、ホッとする人?」「お布団にごろんと横になったときに、ホッとする人?」など例をあげ、当てはまるものに手を挙げてもらってもよい。
「これから、皆の心と体がホッとする魔法の風船を一緒にやってみよう!」
②腹式呼吸練習(1)-仰向けに寝転んで
仰向けに寝転び、腹式呼吸を行うことにより、お腹が膨らんだり、へこんだりしているのを確認する。
「お腹に手を当ててみよう。息を吸ったり、吐いたりするときに、お腹が膨らんだり、へこんだりするのが分かるかな?これはね、皆のお腹のなかに、ホッとリラックスする魔法の風船が入っているんだよ。これから、その魔法の風船を膨らせてみよう」
「お腹に手を当てたまま、お腹に風船が入っているのをイメージしてみよう。これから息を吐くよ。口から、すうっと細く長く息を出してみよう。お腹の風船がへこむのが分かるかな?お腹の風船の空気と一緒に、体のなかのモヤモヤ、イライラも一緒に口から出ていくよ」
「今度はお腹の風船を膨らませてみよう。鼻から、息を吸って、外の新鮮
な空気がお腹の風船を膨らませると、体に元気が湧いてくるよ」
「自分のペースで、息を吸ったり吐いたりしてみよう。段々ゆったりとし
て、心と体がホッとしてくるよ」
③腹式呼吸練習(2)-風船を使って
②と同じ要領で、風船を膨らませるときに、お腹がへこむようにする。
※ゴムの質が硬すぎる風船は、息を吐くときに逆に力んでしまうので、膨
らませやすいように、薄手の風船を用意すること。
④膨らませた風船に、「ホッとしたときの顔」を描く。
⑤できあがった風船の紹介
「どんなときに、この風船のようなお顔になるかな?」など、質問してもよい。
■遊びの展開:
できあがった風船で、体を使った風船遊びを
行ってもよい。
■参考:
ストレスマネジメント教育実践研究会編(2003)
『ストレスマネジメント フォ キッズ 小学生用~ストレスを知り上手につきあうために』東山書房
(ニュースレター40号/2012年8月)