2012年7月~9月の活動報告
理事 渡邉佳代
DV子どもプロジェクトでは、継続団体とDV支援施設の2ヶ所に毎月交互に出向いて、派遣プログラムを行っています。2012年7月~9月までのプログラムの内容は、以下の表の通りです。
2012年12月に、子プロは設立10周年を迎えます。このNPO法人FLC安心とつながりのコミュニティづくりネットワークが、2002年11月に女性ライフサイクル研究所から独立して、翌12月に子プロは設立しました。折しも、2000年に児童虐待防止法が、そして2001年にDV防止法が施行された直後です。設立のきっかけは、当NPOのホームページの掲示板に、「DV家庭に育った子どもへの支援をしてほしい」という当事者女性の方の書き込みがあったことからでした。
当時は、DV家庭に育つ子どもとその母親への支援プログラムは日本で見当たらなかったために、2003年にはイギリス視察から母子並行プログラムの多様なアイデアを得て、カナダ・オンタリオ州のプログラムとアメリカのDAP(Domestic Abuse Project:ミネアポリス家庭内虐待プロジェクト)のプログラムを参考にした母子並行心理教育プログラムを作成しました。来所プログラムを実施したのは、2004年1月~4月(全6回。子ども4名、母親3名)。それを基にして、2005年10月~12月には、DVシェルターに出向いて派遣プログラムを実施(全4回。子ども2名、母親2名)、現在のような半構造化された派遣プログラムは2007年8月からスタートしました。
現在、派遣プログラムを受け入れてくださっている団体は、2007年8月から継続して今年で5年になります。初めて出会った時に、小学校低学年だった子どもが今では高学年になっています。そして、施設での派遣は2010年3月からスタートし、今年で2年になります。施設で出会う子どもたちは一時保護中であるため、出会いは1度きり。1回1回の出会いを大切にしてきました。派遣プログラムは、幼児~小学生を対象にしていますが、出入り自由なオープン・グループで行っているため、蓋を開けてみないと何歳の子どもが何人来るか分からず、時には乳児~中学生までの子どもの参加もありました。
子プロでこれまでに何人の親子と出会ってきたのか、このたび統計を出してみました。団体では2007年から、子ども:222名、母親:78名、計300名。施設では2010年から、子ども:165名、母親:82名、計247名。合わせて547名の親子たちに出会ってきたことになります(2012年9月現在)。また、子プロの活動は母子への直接的支援のほか、対人援助者への意識啓発を目的にしているため、2003年から毎年ボランティア・スタッフ養成講座を実施してきました。こちらも第9回目の昨年までに、修了生は110名になりました。
私自身、2003年から子プロにボランティアとして関わり始めて、普段は臨床心理士としてカウンセリングをしています。当初は、専門家と呼ばれる心理士と一市民であるボランティアの間で立ち位置に戸惑ったことを覚えています。しかし、子プロの活動を通して、支援する/される者を超えて、親子と混じり合ってプログラムを楽しみ、成長し合ってきたように感じています。DVシェルターで親子たちとの出会いを通して、人としてどうあるかが大切であって、専門家(と呼ばれる職種)であれボランティアであれ、単に枠組みが違うだけだと気づかされました。もし、私が使える力があるなら、関わる役割や場面に合わせて、その力をより良く自分のためにも、人のためにも使いたいと思い、これまでボランティアを続けてきた経緯があります。
この数年、私が子プロのチーム作りで力を入れてきたことは、ボランティアの「つなぐ」「つながる」力の育成です。プログラムに参加する親子、子ども同士、母親同士、親子とシェルター職員を「つなぐ」視点と、ボランティア自らが親子や職員、ボランティア同士で「つながる」視点を得て、メンバーとともにプログラムを作り上げていく体験を積み重ねていきたいという思いからです。子プロの場がボランティアにとっても参加する親子や職員にとっても、安心とつながり、そして「人とつながるっていいな」と感じられるエンパワメントと希望の場として存在していけたらいいなと願ってきました。コミュニティを形成する1人ひとりが、あたたかいつながりの場の体験や関係性を積み重ね、自分や他者、地域コミュニティへの関心や愛着、信頼感を高めていくことが、暴力のない安心とつながりのコミュニティづくりになっていくように思います。
子プロを継続していくことは容易いことではありませんでしたが、子プロの活動を通して自分の仲間が増え、この場を大切に思ってくれる親子や仲間たちがいたからこそ、続けてこられたように思います。何よりも、皆でプログラムを作り上げていくプロセスや、「今日もいい時間だったね!」「楽しかったね!」と言い合える仲間たちとの時間や関係性が、とても心地よいのです。NPO活動の良さは、自分の職業の枠組みでできないことや、必要だと思うこと・やりたいことができること。やりたいことをやる、必要だと思うことをやりたいという人を応援するチームでありたいと、これからも考えています。これまでに子プロの活動に加わってくださった仲間たち、応援してくださった方々にたくさんの感謝の気持ちを込めて!これからも、どうぞ宜しくお願い致します!
(ニュースレター41号/2012年11月)