理事 渡邉佳代
DV子どもプロジェクトでは、2013年4月~6月までに以下の派遣プログラムを実施しました。
6月に久しぶりに子どもグループに入りましたが、「来たよ!」「お待たせ!」と会場に飛び込んでくる子どもたちを見て、プログラムをとても楽しみにして来てくれていることが、よく感じられました。子どもプログラム・スタッフたちがこの場を大切にして、子どもたちと良い関係を築いてきたことを感じ、とても嬉しく思いました。コミュニティの中で、子どもたちにとって「あそこに行けば、○○さんに会える!」「楽しい場所!」と感じられる場の1つでありたいと、これからも願っています。
■日本コミュニティ心理学会研究大会での発表に向けて
7月13日(土)、14日(日)に慶應義塾大学日吉キャンパスにて、日本コミュニティ心理学会第16回研究大会が行われます。大会では、『DVシェルターとNPOの協働から、組織・チームづくりを目指して―派遣プログラムの実施・継続を通して』と題して、施設職員さんたちと自主シンポジウムを行います。子プロの発表メンバーは、渡邉、田丸(活動会員)、鷲岡(実習生)、司会には当NPO理事長の村本先生、コメンテーターには高畠克子先生(東京女子大学)を迎えます。現在、その発表に向けて、発表メンバーや施設職員さんたちとの打ち合わせやディスカッションを進めています。
子プロは、2009年に施設から依頼を受け、一時保護中の母子を対象にした派遣プログラムを実施してきました。始めてみて分かったことは、コミュニティに出向き、施設と協働していくにあたって、子プロという組織・チームづくりと、スタッフのコミュニティ感覚が重要だということでした。この数年、「より良くつなぐ・つながる」ことを目的に、スタッフのコミュニティ感覚の向上を目指したチームづくりに取り組んできました。
また、施設での派遣プログラムが4年目を迎え、当初の目的やニーズがより明確化・多様化してきたように思います。今回の発表に向けて、これまでの活動を振り返り、評価し、互いの思いや目的を丁寧にすり合わせていくプロセスが、協働・連携につながっていくように感じています。残念ながら、今回のニューズレターの発行に大会発表の報告が間に合いませんでしたが、フロアーとの活発なディスカッションからも、より良い支援に向けた協働や、チーム・組織づくりのヒントが得られたらと願っています。
■新NPOでの展開に向けて
子プロは、①DV家庭に育った子どもへの予防的支援、②専門家集団への意識啓発、③一般社会に向けた意識啓発を目的として、2002年12月に設立されました。①の予防的支援については、2003年に研究会を経て、2004年に来所形式で全6回の母子並行心理教育プログラムを実施し、それを基に2005年には地域のDVシェルターに出向いて全4回のショート・プログラムを実施しました。2007年8月より、団体で半構造化された派遣プログラムをスタートし、加えて2010年3月より施設での派遣プログラムがスタートして、現在まで継続しています。
派遣プログラムは、これまでに団体では54回実施し、参加者数は子ども237名、母親78名(母親プログラムの実施は2011年10月まで)、施設では18回実施、参加者数は子ども207名、母親99名になりました(2013年6月現在)。のべ444名の子どもたちと、177名の母親たちに出会ってきたことになります。
②の専門家集団への意識啓発は、援助実践家、対人援助を学ぶ大学生・大学院生を対象として、2003年より毎年12月にボランティア・スタッフ養成講座を実施し、2012年の10回目までに、修了生は118名になりました。2009年からは、立命館大学大学院応用人間科学研究科から、臨床心理学を学ぶ大学院生の実習を受け入れてきました。
③の一般社会に向けた意識啓発としては、この10年の中で、第34回三菱財団社会福祉研究事業・研究助成、2006年度ドコモ市民活動団体への助成事業、立命館大学法科大学院・平成19・20年度文部科学省教育推進プログラム「地域密着型司法臨床教育の模索と拡充」事業などの助成を受け、報告書や冊子、子ども向けワークブックなどを発行してきました。
この10年を振り返ると、私自身、駆け出しの臨床家から現在に至るまで、たくさんの親子や支援者たちと出会う中で、心理という専門性を相対化し、コミュニティに暮らす1人の人間としてどうあるかを考え続けてきたように思います。親子やボランティアたちと互いに学び合う中で、市民性、対等性、主体性、コミュニティ感覚など、様々なキーワードからも子プロという場を問い続けてきました。
その中で、自分がやりたいと思うこと、必要だと思うことに主体的に働きかけていくことを応援する場でありたい、一市民として、支援者として知恵や経験を共有し、互いに学び合う場にしていきたいと思うようになり、それが現在の「子どもを中心に置いたボランティアのチームづくり」につながっています。これは子プロを応援してくださってきたFLCの先輩方や会員の皆さまから受け渡されてきた「安心とつながりのコミュニティづくり」の姿勢であり、希望の種でもあります。
まだまだ小さなコミュニティかもしれません。でも、タンポポの綿毛がそれぞれの土地で力強く根を張っていくように、子プロを大切に思ってくれる親子たち、ボランティアたちから、安心とつながりのコミュニティが広がっていくことを願って、これからも活動を展開していきたいと思っています。これからも、応援、お力添えをどうぞ宜しくお願い致します。
(ニュースレター44号/2013年8月)