2年前、夫は定年を迎え、退職後さらに1年間単身赴任をし、昨年末に職務を終えやっと日本に、やっと我が家に戻ってきた。28歳、25歳になる子どもたちが中・小学生の時からなので、約12年間、家族・夫婦離れ離れの生活だったことになる。
世界情勢が年々不安定になり、夫がようやく私たち家族の元に戻ってきてくれたことは、心からホッと安心し本当にうれしいことだ。しかしうれしいこと楽しいことも、ストレッサ―になりストレスを生むといわれる。うれしい環境年々不安定になり、夫がようやく私たち家族の元に戻ってきてくれたことは、心からホッと安心し本当にうれしいことだ。しかしうれしいこと楽しいことも、ストレッサ―になりストレスを生むといわれる。うれしい環境の変化であっても、環境の変化はやはりストレスになるのだ。
夫は生涯現役でいたいと、退職後も仕事をいろいろ探しているようだが、毎日、毎食後の洗い物、家の掃除、庭掃除、時には買い物にも行き、そのほかにも気になっていた家の修理など、自ら積極的に、小まめに家事を担当してくれてとても助かっている。洗濯と夜の食事作りはわたしが担当しているが、夫に見送られて仕事にいくのもいいものだ。なかなかどうして良いパートナーシップだと思っている。
しかし連日夫が自宅にいて、これまで家事で入ることのなかった台所に入り、部屋を掃除する。すると台所の物の置き方、部屋の掃除の仕方、物の片付け方、また一緒にいる時間も長くなり、テレビの見方からものごとの捉え方などなど、なんでもないことにもこれまで見えなかったお互いの価値観、気づかなかったお互いの感覚の違いなど、それぞれの視点やこだわりに気づく。
最初の1週間くらいは、これまでご近所の人生の諸先輩方から、「定年退職後、夫といる生活は大変」「単身赴任が長いと一緒に暮らすのはもっと大変」だと聞いていたように、正直何かしんどく息苦しい感じがした。しかし細々と相手のやり方について疑問を持ったり、意見をいったり、言われたことにいちいち反応したりしていては毎日やっていられない。
徐々にどちらからともなく感謝を言葉で表わし、「そうやね」「ほんまやな」と共感し合い、しかし時には声を荒げお互いの気持ちや意見を言い合う。もちろん、冗談を言い合ったり大声で笑ったりもする。これが一緒に暮らすということなのだろう。
結婚生活32年、さぁ文字通り、自立したおとな同士の第2の人生の幕開けだ。夫婦としてお互い、思いやりの気持ちを大切に、そのうえでお互いの違いを認め合い、そしてその違いの中に自分にはない良さを見つけ、言葉でそれを伝え合い、さらに共通点を探し、日頃の何気ないコミュニケーションを楽しみながら、言語だけではなく、時に表情や声のトーンなど非言語も意識して・・・。
約12年間、文明の利器のおかげで遠く離れていても、メールやスカイプを通じてコミュニケーションをしてきた。しかし、それぞれが自分なりの暮らし方をしていた夫婦。やはり離れている時間が長ければ長いほど、生身の人間が「一緒に暮らす」という環境の変化への細やかな対応が求められるのだと実感している。
ピンチはチャンス!今また新たな「新しい暮らし」を構築しているところである。
(ニュースレター52号/2017年1月)