ホノルルにあるKids Hurt Too HawaiiというNGOを訪問している。日本でも有名なダギーセンターに端を発する子どもへのグリーフケアを提供するNGOで、15年の実績を持つ。4日間のボランティア・スタッフ養成講座に参加したが、私たちのやってきたDV子どもプロジェクトやVi-Projectの活動と重なる部分を感じた。
これはコミュニティ・ベースのプログラムであり、トレーニングを受けたボランティア・スタッフがピアとしてグループをファシリテートする。グリーフは病理ではなく人間の本質に含まれているものと捉え、グリーフワーカーにトレーニングは必要でも、学位はいらないとしている。ボランティアは学生のインターンだったり、一般市民だったりするが、トレーニングは自分自身の喪失体験の振り返りに始まった。子どもたちのグループでは、最初に自分の体験をシェアするが(もちろんパスあり)、ファシリテーターも自分の体験をシェアするそうだ。ただし「30秒を超えないこと」というルールがミソだ。
子どもたちのグループにも参加したが、DV、離婚、死別、虐待などによる養子縁組などの経験を持つ子どもたちが、それらの体験をオープンにしてつながることのできる場となっている。一緒に食事したり、遊んだり、イベントに参加したりしながら、まるで拡大家族のようにゆるやかに支え合う(これはハワイの伝統と関わっているのかもしれない)。長く通っている子どもが、ファシリテーターとして小さな子どもたちをサポートする側に回る姿を見ることもできるのも、15年続けていればこそだろう。
主催者であるシンシア・ホワイトさんと伊藤ヒロさんは専門的背景を持っておられるが、何より、当事者として自分たちの欲しかった場を拓くことに献身し、成功してきたのだと思う。流行りの技法や専門主義でないところがいい。その場はククイ・センターという素敵な建物の中にあるが、資金繰りの努力には並々ならぬものがありそうだ。それでも、場を拓き維持することが大きなパワーを生み出してきたことは確かだろう。
Kids Hurt Too Hawaiiは、東日本大震災後、Kids Hurt Projectを立ち上げ、日本でも活躍中である。3月末には、東北の子どもたちとハワイの子どもたちとのキャンプが予定されている。これからも新しいネットワークが拓かれ続いていくことを願いながら、私たちも何らかの形で連なっていけたらと思う。
(ニュースレター50号/2016年3月)